第一場 ページ2
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「ようこそ御出下さいました」
美しい白銀の髪。
三つ指をつき、面を上げる。
柔和な瞳、
売り物の 笑顔。
流れるような振舞いで、
囲炉裏の炎が優しく音を立てる部屋へ 私の手を引く。
その外見からは意外性を感じる、骨ばった手。
座布団に腰を下ろすと、彼が慣れた手つきで酒を用意し始めた。
「初めてですか？」
「うん」
「やっぱり。あまり見ない顔だから」
上目遣いで 私をそれとなく見つめながら
一瞬、にやりと妖しげに笑う。
…成る程、ここが
“都で最も人気の遊郭”
と、呼ばれる意味が 判った。
心を瞬時に掴むような、引き込むような
名前も知らない彼の 艶やかな表情。
「僕の名前、ご存知でしたか」
「ううん。ごめんなさい、表札も男本も何も、見てなかったの」
「そうでしたか。僕はジェミンといいます」
年は19、20、それくらいか。
甘い笑顔には確かに幼さを感じるけど、
身体から漂う“それ”の芳香は、あまりにも甘美だ。
「ふふっ、珍しいですね。遊郭で無作為に相手を選ぶなんて」
「遊郭なんて初めてだもん。勝手が分からないの」
「じゃあ、貴女は幸運ですよ」
「そうなの？」
「ええ。僕、人気だもの」
得意げに、気後れする様子もなく、
私を見据えて また悪戯な笑顔で笑う。
思わず笑ってしまう。
彼も何故か、愉快そうに頬を綻ばせた。
「貴女みたいなお客様、なかなかお目にかかれない雰囲気ですね」
「あなたこそ、ちょっと変な人」
「あははっ！…だって貴女、緊張してる素振りも、何か期待してるようにも 見えない」
そう言うと、彼は その細い腰を上げて
私の隣へ、距離を詰めてくる。
その艶やかな香りが鼻腔に迫った瞬間、
私の手を取った。
無邪気に 獲物を狙っているみたいな その瞳。
私の頬に触れた、その手。
骨格をなぞるように、指を滑らせて
私の顎をそっと 手中に収める。
ジェミン、と 名乗った彼の 真っ黒な瞳に
吸い込まれそうになる。
「…僕が忘れさせてあげる。貴女を困らせるすべてを」
「…」
「貴女はこんなに美しいのに。さっき、一目見たときから思っていた」
“暗い顔なんて、僕と居る間は絶対にさせません”
彼がそう、囁く。
と、共に
その紅くて柔らかい感触を 唇に感じた。
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きむロン - なにこれえッち！！！やだ恥ずかしい！！！（） (2021年3月19日 10時) (
レス) id: 687bfe2f8c (このIDを非表示/違反報告)
ひかるちゃん(プロフ) - 遊郭と韓国アイドルの世界ってなんだか似てるなって思いました (2021年1月25日 2時) (レス) id: a4b03772ec (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 既視感があると思ったら3年か4年前に読んでい方の作品にまた出会えて本当に感激です泣ありがとうございます！ (2021年1月3日 3時) (レス) id: 7a2ecf4d8f (このIDを非表示/違反報告)
獺 - 焦がれるほどお待ちしておりました。再び貴方の文学に触れられると思うと眦が熱くなるような気すらします。素晴らしいあなたと、素晴らしいあなたの文学が本当に大好きです。 (2020年12月20日 11時) (レス) id: 5140f050ee (このIDを非表示/違反報告)
理沙 - 文字から伝わってくる色気が凄いです…。風景が簡単に浮かんできます。設定もそれぞれに合ってて、（特にテンちゃんのキャラ最高です笑）全員がどんな風に出てくるのか今からとても楽しみです。 (2020年12月18日 21時) (レス) id: ba6de82bf1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月
| 作成日時：2020年12月17日 17時
