来訪者 ページ5
インターフォンが鳴ったので扉をあけると、キヨちゃんの大きな身体が飛びついてきた「きゃっ」
「会いたかったよ、Aちゃん。 Aちゃんも、おれに会えなくて寂しかった？」
身体を離して、こてんと首を傾げるキヨちゃん
そのかわいらしい仕草に心をときめかせながらも、わたしは頷いた
すると、彼はむうっと眼を細めて、うん、じゃわからない！ とそっぽを向いた
「もう、まるで子どもだね。 大きなベビちゃん。 会えなくて寂しかったに決まってるじゃない」
「……どれぐらい？」
「こーんなぐらい！」
少し
思わずよろけても、そのままぎゅうっと力を込められる
「ふふ、どうしたの？ 今日は甘えん坊の日なのかな……」
「……ん。 おれ、実は、なんかちょっと、
「えっ」
「で……なんか、なにする気にもなれなくて、……身体もだるかったしさ！ でも、ずっとこのままでもいられないからって、今日精神科行ってきたんだ」
連絡を取りあっていなかった間の彼の情報に耳を傾けながら、震える身体をさすってやると、彼はぱっと離れて、わたしの顔をじっと見た
心なしか、少しやつれた気がする
涙で濡れた眼が、
「薬をもらったんだよ。 いっぱい飲んだら、しんどい気持ちとか、倦怠感？ ってのも、なくなって…………楽になった。 でも、A、おれのこと、嫌になった……？」
目尻から、ぽろんと雫が落ちた
わたしは慌ててその涙を拭いながら、そんなことないよと笑った
「それぐらいで、嫌いになんてなるわけない。 むしろ、キヨちゃんがそんなつらい思いをしてたのに、気づけなくてごめんね」
「A…………」
「わたしはどんなになっても、キヨちゃんが大好きだよ」
「おれが、また、病んでも……？」
あんまり弱気なことをいうから、今度はわたしが力を込めて抱きしめてやった「そんなこというなんてらしくないよ！ 好きに決まってるでしょっ」
もう恥ずかしいなんて気にしてられない。 キヨちゃんの大声に負けないくらいの声でそう伝えると、彼はようやく笑った
「……おれも、Aのこと、ずっと好き」
「もう、恥ずかしいから」
そうだな、と頬を掻いた手は、なぜか傷だらけだった
ラッキービデオ
クッキングママ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：玲佳 | 作成日時：2020年4月4日 19時
