Alone Together (ページ34)

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Folie A Deux ページ34

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あれから、随分と時が流れた気がする

わたしは、ひとりで前を向くために、彼との想い出を捨てていった

はじめはそれに触れるたび、手が震えたが、ひとつ、またひとつと捨ててゆくごとに、そんな気持ちも薄れていった

最後に残ったのは……わたしが作ったふたりの人形だけだ

握りしめると甦る、悲しい記憶たち

「ごめんね……」

わたしでは抱えきれなかったのか。彼のすべてを受け容れる器が、わたしには足りなかったのか

……いや、よそう。過去を顧みるのは、もう

わたしはそのふたつをごみ袋に詰めて、口をしばった

そろそろ収集車がくるな

これを捨てたら、今度は引越しだ。だれも、なにも知らない土地へ身を置く。そう決めると、なんだかんだで心も踊ってくる

わたしはごみ袋を持って、玄関へ向かった

そして、サンダルを履いたところで、インターフォンが鳴る。回覧板だろうか。何の考えなしに扉をあけて、わたしの時が止まった

「久しぶり、A。やっと会えた。ああ、髪切ったんだ。短いのも似合ってる。な、家に入れてよ。頑張って歩いてきたんだから」

あの頃と同じ、虚ろな眼をした彼が

あの頃と同じ、パジャマを着た彼が

あの頃と同じ、裸足のまんまの彼が

静かに笑って、わたしの身体に腕をまわした

「……改めて、ただいま。これからはふたりで生きていこうな」

そうして、身体を離す。彼の笑顔は、いつかの時よりも十も二〇も老けこんだようだった