入所 ページ16
「それじゃあ、ここからは管轄外だから」
「自分が担当です」
手をふって出ていく先生と入れ違いに、随分と屈強な男が入ってくる「ちょ、ちょっと待っ」
頭がついていかない。 いたた。 薬、飲みすぎたかな
男はおれを鉄格子で仕切られた部屋へ入れると、靴を脱げといった。 訊き返しても、同じことをいわれるだけ。 おれは大人しくいうことをきいた
「次は、これに着替えろ」
おれは一瞬、拘束衣か？ と身構えたが、どうやら普通の患者服らしかった。 おれはまたはいと頷いて、それを受けとった
着替え終えると、今度はおれが今しがた脱いだ服をよこせという。 おれはパーカーのポケットから彼女の人形を抜いて、服を渡した。 すると男は怪訝そうに眉をひそめて、それはなんだ、と訊ねた
「これは、彼女が作ってくれた、彼女の人形です」
「確認する。 見せろ」
浅黒い腕が彼女に触れようとする。 おれは咄嗟にその手をはらった「だめ！」
「確認って、なにを確認するんだよっ。 彼女を疑うな！」
「危険物が仕込まれていないかの確認だ」
「Aちゃんがそんなことするわけないっ」
ぎゅっと彼女を抱きしめながら、きつく眼をとじる。 殴られるかもしれないと思ったからだ。 だが、そいつは案外あっけなく引き下がった「わかった。 それならもういい」
まるで、こいつは頭がおかしいんだったな、とでもいいたげな眼だった。 でも、もうおれも、そんな眼をされるのに慣れはじめていた
服と靴を没収されて、おれに残ったのは彼女だけ。 しかし、それでよかった。 それだけで充分だった
おれにはAがいる。 そう思うだけで、どんな困難も乗り越えられると信じられた
ラッキービデオ
クッキングママ
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作者名：玲佳 | 作成日時：2020年4月4日 19時
