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『ふぅー…スッキリした!』
ナイフで切り取った髪の束。
それを墓の前に置いた。
『もうここには来ない。この長い髪、この星で生きた過去をここに置いていくよ』
Aは自分に言い聞かせるように呟いた。
「A!!」
丘の少し下から声が聞こえた。
そして、丘を駆け上がる音が聞こえた。
『神威!!どうしたんだ、そんなに焦って…』
「はぁ…もうびっくりさせないでよ」
焦った様子の神威は顔をあげてAのほうを見た。
「...どうしたの?その髪」
『ああ...これか?やっぱ変か』
「いや、そうじゃなくて...Aじゃないみたい」
『あはは...もう、これで...』
Aは少し口ごもった。
そして、神威がいつも通り話せていることに気づく。
『これで、ちゃんと私を見てくれるか...?』
「っ...!?」
Aが少し寂しそうな目で神威を見た。
『今まで…誰かと重ねていたのか?』
「…ちょっとだけ、似てたんだ。母さんと。眼差しとか、口調も少しね」
『そうだったのか…』
「仲良くなるにつれて、Aが優しい目をしていって…ごめん、俺は…」
Aはそっと神威に近づく。
『もう、違うんだろう?』
「うん…ごめんね…」
少ししてから、丘を下っていく。
Aと神威はいつも通り話す。
「Aの髪、整えてあげないと」
『無造作に切ってたからな…そんなに酷いか?』
「ちょっとね、適当にやりすぎだよ」
『あはは…みんなに笑われるかな』
春雨の船はもうすぐそこだった。
船の前には阿伏兎が立っていた。
「おーい、時間だぞー」
大きい声で阿伏兎は呼びかける。
それに応えるように二人は走り出す。
「あの様子だと、大丈夫だったみたいだな」
阿伏兎はふっと笑った。
『阿伏兎ー、もう大丈夫だ。行こう』
「あれ、嬢ちゃん妙にスッキリしやがって」
「酷いよねーこれ。Aってこういうの下手なんだね」
『う、うるさいな』
「ほら、さっさと行くぞー団長さんよ」
「はいはい、わかったよ」
3人は船に乗り込んだ。
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ゆう(プロフ) - 雪さん» ご報告ありがとうございます!直しておきました! (2020年1月28日 22時) (レス) id: 6c784c5756 (このIDを非表示/違反報告)
雪 - ちなみに16話の最後から3番目の [ ○○は、よく母から紙を整えられていた]のところです>< (2020年1月7日 20時) (レス) id: 16253bb5bd (このIDを非表示/違反報告)
雪 - 気になったんですけど、 紙じゃなく髪じゃないですか? 勘違いだったらすいません。(16話) (2020年1月7日 20時) (レス) id: 16253bb5bd (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - YUKARI♪さん» ありがとうございますー!!妄想力しかないもので拙い文書ですが... (2019年11月29日 10時) (レス) id: 6c784c5756 (このIDを非表示/違反報告)
YUKARI♪ - すごく面白い…どうやったらこんな面白い物が…とにかく!凄い面白かったです!!! (2019年11月29日 6時) (レス) id: a01ec1bc5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よっちゃん | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月21日 17時