間違い電話がかかってきた【文スト】

3コール 俺ださん ページ4

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……うわぁ、綺麗な声







“その声”を聞いて場違いにも持った第一印象がこれだった



独特な低い声、はっきりとしたハスキーボイス

乱暴な口調なのにも関わらず、何処か繊細で



俗に言う「イケボ」と云う奴だろうか







……いや、ちょっと待て。違うだろ、私



イケボがどうのの以前の問題だ

この電話は明らかに、間違い電話、という奴である






誰だ、芥川って。私、芥川になった覚えないんですけど？




ツッコミたいのはやまやまだが、急に間違い電話がくると、その間違いを指摘したくてもすぐには云えなくなるらしい



ましてや電話で話すのが苦手な私なのだ


口をパクパクと動かすばかりで、何も言葉は出てこない




更に運悪く、どうやら相手は間違い電話をかけている事に気付いてないようである

私の事をまだ、芥川だと信じて疑っていない






「ああ、急に云われちゃぁ、わかんねぇよな。悪い、芥川。俺だ」


………誰だ




間違い電話をかけてきた上にツッコミどころ満載の電話主である





もしかして、新手のオレオレ詐欺だろうか。

最早、そんな事を考え始める始末





『えっと……』



「すまねぇが、今、急いでんだ。要件をとっとと伝えさせてもらうぞ」



『……』



……お願いだから私の話を聞いてくれ、俺ださん



もごもごと口ごもるも、彼はまったく気づかず


半ば泣きそうな私の心中を無視して、俺ださんこと、電話の主がやけに神妙に話し出した









「…最近、ポートマフィア内で、不審死が増えているのは知っているな？」




初耳です



それと、何故でしょう。さらっと「マフィア」だとか「不審死」とか不穏なワードが聞こえたような気がするんですが




「幹部会で話し合った結果、マフィア内に裏切り者がいるんじゃねぇかっていう…」


『ちょ、ちょっと待ってください！な、な何、話しているんですか？』


これ以上話を聞くと(いやもう既に手遅れな気がするが)、あらぬ事に首を突っ込みそうな気がして急いで話を中断





「は……？女……？」



当然、画面の向こうからは当惑した声



どうやら相当驚いている。その芯の通ったような声が少し揺らいだ





とはいえ、彼は電話した相手が“芥川”じゃない事だけは瞬時に理解したようで





「おい、手前。どう云う事か説明しろ」




次の瞬間。ドスの効いた声(イケボ)で凄まれた。



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