story.11 ページ11
.
(…っ危ない！)
前のめりになった段階でやっとはっとして、私は思わず目を見開いた。
どうしよ完全につまずいた。何かに掴まないと…
…だが時すでに遅し。崩れた体勢はもうフォローする事が出来ず、「このまま倒れるしかない」と諦めかける。
しかしそんな次の瞬間、倒れたはずの頭上から鷹の目様の声がした。
「…はぁ、余所見していたら危ないぞ？」
『…っえ？』
声と同時に、何か温かいものに包まれている事に気付く。
ふわりと取り巻く、既視感のある淡い香り。
どういう事だ。私はたった今、つまずいて倒れている訳で……
『って、鷹の目様…？』
戸惑いの声を漏らして顔を上げると、目の前には彼の整った端正な顔。
前髪が触れ合う程の距離に、思わず言葉を詰まらせる。
「大丈夫か？」
腰に回された腕、耳元に伝わる微かな吐息。
そして何より、普通は鼻を掠める程度の香水の匂いが、なぜか全身を包んでいるというこの状況で、すぐさま全てを悟った。
『っ…！あ、ありがとうございます…危ない所を…？』
語尾が疑問形になる私の髪を、そっと耳に掛ける彼。
一つ一つの仕草になんというか、色気が滲んていて、思わず目を伏せる。
『あ、の、近い…です』
こんな状況、きっと誰でもこうなると思う。
無意識なのか故意なのか分からないが、もはや抱きしめられてる体勢と同じなわけで。
助けてもらっておいて何だが、私はどうにかしてここから抜け出す方法を考えていた。
このままこの状況でいたら、何かに吸い込まれてしまいそうな気がする。
一歩後ろに下がろうとするが、腰に回された腕が私をがっちりホールドしていて、逃げれそうもない。流石に力の差がありすぎる。
…というかもう離してくれてもいいじゃないか。な、なんだこれ…
不覚にも高鳴る胸を押さえて、そんな疑問を考える。
「＿＿＿A、」
不意に、静かに名前を呼ばれた。
触れたら切れそうな程鋭い切れ長の瞳が、逃がさないとでも言うように私を捉える。
しかしその瞳には、心なしか悲しみの色があるように見えた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 569人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シュガーブレット(プロフ) - ワンにゃんさん» うっｯ……(温かすぎるコメントに作者絶命) こんな更新速度亀かよぉぉぉ！！あぁん？！(？) みたいな小説にそんなお優しいコメントをくださるなんて…( ;∀;) テスト頑張ります！ありがとうございますぅぅ！(´；ω；｀) (2020年7月13日 19時) (
レス) id: 546a702772 (このIDを非表示/違反報告)
ワンにゃん - 更新楽しみにまってます！テストでいい点数取れるように頑張ってください！ (2020年7月13日 2時) (レス) id: ef2c77108f (このIDを非表示/違反報告)
シュガーブレット(プロフ) - 龍影雫さん» そそ、そんな優しいお言葉を…！！めちゃめちゃ励みになりますぅうぅぅぅぅぅぅ(迫真) 前回に引き続き、龍影雫様のコメントには頭が上がりません( ;∀;) (2020年6月14日 15時) (レス) id: 546a702772 (このIDを非表示/違反報告)
龍影雫(プロフ) - 今の時期、学校+更新ってなると色々大変ですよね…分かります。お互い乗り越えていきましょう！ (2020年6月14日 9時) (レス) id: 3ae87b76e5 (このIDを非表示/違反報告)
シュガーブレット(プロフ) - 唐柿煮さん» うわぁっ先輩…！！(ﾟДﾟ;)パイセンにそのような言葉を頂けるなんて嬉しい！(？) ありがとうざございます！ (2020年5月12日 0時) (レス) id: 546a702772 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：シュガーブレット x他1人 | 作成日時：2020年4月1日 16時
