はいきゅーきねん ページ25
お気に入り登録者数819人突破記念、『光輝くん視点のお話。』
楽しんでいただければ幸いです。
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その日、日課のランニングから帰ると、半開きになった扉の向こうで何か影が動くのが見えた。
なんかあったっけと覗いたら、そこにはぼんやりと窓の外を見つめるAがいた。
あ、そっか。 昨日から、ここ、Aがいたんだ。
Aは、いつもの眠そうな黒目を更に眠そうにして、布団の上に座り込んでいた。
なんだかその様子に若干のデジャヴを感じて、俺は首を傾げる。
うっすらと明るくなった空がカーテンを透かして、Aの顔を照らした。
眠たげに伏せられた、大きな瞳。 強い光を持った綺麗な目。
なんだか、似てる。誰に? ──誰かに。
そう、この目は、あの人の。
黒くて、眠そうで、ほら、思い出せそう。
「あ、」
小さく声を上げる。
そうだ。 この目は、彼のものだ。
父ちゃんの後輩の、バレーの上手い、強い光を持つ黒目。
ああそうそう、あの人あの人。
そーだそーだ、そっくりだなァと思いながら、俺はウンウン頷く。
改めて見てみると、やっぱり。 ちょーそっくり。
なんで今まで気づかなかったんだろうなァ、と思いながら、俺は1歩踏み出、そうとした。
ふと、ピタリと足が止まる。
そういえば、父ちゃんがいっていた。
珍しく難しい顔をして、「アイツなァ、早く気づけよ」と。
んー。……どういう、こと、なんだろう。
あの人にそっくりなA。
毎日のように出かけているというA。
今朝、父ちゃんが見かけたという、A。
ん?
あれっ?
「……え、まじ?」
もしかすると、もしかしてしまうのだろうか。
でもなァ、そうすると、俺が困るんだよなァ。
だって俺、アイツのこと気に入ってンだもん。
……どーしよっかなァ。
「……あ、黙ってればいんじゃね?」
俺って天才、でもすっげー悪いヤツ。 そう心の中で呟いて、俺は部屋に入る。
……なァ、A。
お前が行きたいっていうんなら、俺は止めないから。
だからせめて今だけは、俺だけのものでいて。
そう願いながら、俺は声をかけた。
この発見に、気づかないフリをして。
……ねえ、赤葦さん。
早くしないと、アイツ、俺がとっちゃうよ?
──なァんて、ね。
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麗夢 - 前見た時本当に感動してまた読みに来ました。私が知っている夢小説の中で1番大好きな作品です! (3月1日 23時) (レス) @page44 id: 6ebe956d7c (このIDを非表示/違反報告)
にっこり(プロフ) - 感動したやっぱりお父さんって大事だなぁ後光輝君もいいな! (2021年8月25日 7時) (レス) id: ec120adb39 (このIDを非表示/違反報告)
藍琉(プロフ) - とても感動しました!!!!泣きながら読んでました!この作品に出会えて良かったです!ありがとうございました!!!! (2020年6月11日 0時) (レス) id: e2f068ce6d (このIDを非表示/違反報告)
芥川とミルクティ - 何度見ても泣きます。もう最後なんか、嗚咽が止まりません。本当に感動する素晴らしい作品です。作者様のとても美しい文章に惹き付けられます。 (2020年3月14日 20時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
哀駒(プロフ) - 完結おめでとうございます^^もう泣きすぎて明日目腫れそうです…w (2020年3月10日 22時) (レス) id: 677b3c59a5 (このIDを非表示/違反報告)
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