羽 ページ4
北さんに腕を掴まれる。しかも、割と力が入っていて痛い。
「痛いですよっ...」
「あ、すまん」
しかし、北さんは悪気がなかったようで、すぐに離してくれた。曰く、話がしたかったが、逃げられると思ったらしい。ごもっともです、逃げる気満々でした。
会議室3に入り鍵をしめる。誰かが入ってきたら、それはそれで困るから。
椅子に座り、改めてご対面。先ほどから一遍、何故か冷静になれた。
理由は私が諦めたから。
「自分は良かったんか?婚約者がいるんやろ。そんな軽い気持ちだったんか」
「な訳ない。でも、お父さん今回良く分かんないけど必死なんです。知ってますか、私のお父さん、エゲつない事するんですよ。」
一度、殺されかけたんです。私の婚約者。
仕事もバレーもできないような、社会的に殺されかけたんです。
ほら、この会社食品会社じゃないですか。勿論、色んなお偉い方と知り合いで。
私の婚約者の方。ウラで手を回されて、痛い目あったんです。
勿論、私がなんとかしました。色々、犠牲をだして。
北さんはゆっくり、頷いて聞いてくれた。そして、軽い気持ちと言ったことを訂正して、謝ってくれた。
でも、根本的な解決にならないし。もう、私には侑を諦めるほか道はない。
「....こんな事、目の前で言うのも可笑しいけど。俺嬉しかったねん、好きな部下と結婚できるって聞いて。次期社長にしたるっていわれた時より嬉しかったねん」
「え、北さん私の事好きなんですか」
「好きやで、初めて会った時から指輪こさえてたから、言わんかったけど」
気遣いできるし、女性らしいし。目が合うと笑ろうてくれるし。オマケにコネって言われへんくらい仕事頑張っとるし。
知らんかった、というえば知らんかった。北さんは落ち着いた雰囲気だし、私みたいな人タイプじゃなさそうだった。
お見合い結婚という事実が私の中を占め過ぎて、北さんが私の事が好きだったことなど、ちっぽけなことに感じてしまった。申し訳ないが。
「だから、俺は...その婚約者よりお前を幸せにしたる自信がある」
「だから何だっていうんですか」
「俺と結婚してくれへんか」
そんなこと言われなくても、結婚しますよ。と私は一足先に会議室3を出た。
私にはもうお見合い結婚しか道がないねん。なんて、北さんの関西弁が移ってしまったかもしれない。
これからどうしようか。同棲してる家、どうしようとか。フェスのチケット取っちゃったやんとか、そんなこと考えながら、泣きながら、帰った。
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狼 - 三角関係ってやつですねぇ…ヤバイですねぇいいですねぇ←(さいてi (2020年3月20日 21時) (レス) id: 58dc9d80b9 (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - ありがとうございます!!自分の中でもいかに北さんが喜ぶハッピーエンドというのが難題でした!最初から読んでいただけてるなんて、本当に光栄です。よろしければ少ないですが、小話と次作も読んでいただけると嬉しいです!! (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - 紫乃さん» ありがとうございます、めちゃくちゃうれしいです。当方本当に語彙がないので、国語辞書を片手に執筆したかいがありました! (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - 瑞稀さん» コメントありがとうございます。どうしてもここまで北さんについて深く掘り下げると、肩を持ちたくなりますよね!!小話では北さんに救われるよう書くので、楽しんでいただけたらと思います。 (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
猫太郎丸 - 完結おめでとうございます!!!初投稿されたときからずっと見てた作品で毎回ムズきゅんされました…!侑くんも北さんも報われてほしくてでも作者さんの完結方法はとてもスッキリして今とても爽やかです!(?)改めまして本当におめでとうございます! (2020年3月7日 22時) (レス) id: 3db7769967 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:本郷ゆい | 作者ホームページ:http://nanos.jp/honngoyui/
作成日時:2019年11月11日 22時