S.tiger【病系短編集】11

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宮「ぁん、じょう、び…」

閑「…誕生日？」

宮「っお、ぉめでと、したぃ」

閑「誕生日を、お祝いしたい人がいるんだ？」


コクっと海斗が頷く。俺は、壁にかかったカレンダーに視線を向けた。



海斗のお母さんの誕生日は、たしか冬だったはず。となると…


閑「…デイサービスの人とか？」


少し間があいて、海斗がもう一度頷く。なんとなく恥ずかしそうに俯いた視線を見て、俺の中である予感が働いた。



閑「もしかして、気になる人？」

宮「…んー、」


この質問には、首をひねるだけだった。でも、俺の予感はあながちハズレでもないような気がする。


海斗だって、26歳。好きな人くらい、いてもおかしくないはず。


そう思ったら、急に胸の中が甘酸っぱくなった。いつ以来だろう、こんな気持ち。最近自分自身に浮いた話がないせいもあるけれど、俺は久しぶりに心がソワソワするのを感じた。




閑「よし、じゃあ今日は作戦会議だ。」

宮「んっ！」


パチッと海斗がまばたきをする。かわいらしいその仕草を見ながら、俺は腕組みをして仕事中以上に脳みそを働かせ始めた。




まず、大掛かりなことはそうそうできない。プレゼントを買ってくるとかなら協力できるけれど、そもそも片思いの相手には何を渡したらいいんだろう。お菓子？小物？まさか花じゃないし……


閑「…なあ、海斗。その人のこと、もう少し教えてくれない？」

宮「…ぁめっ、」

閑「ダメか…。」


しょうがない。こうなったら、気持ちで勝負だ。



閑「海斗。海斗が、その人に一番伝えたいことは何？」


んー、とうなりながら、海斗は口を開けて何度か頭を振った。これは、悩んでいるときの仕草だ。



宮「っ…！ぅあ、あり、あとっ。」

閑「ありがとう？」

宮「い、っしに、い、え、くれ、て」


一緒にいてくれてありがとう、か。いい恋してんだな、海斗。



閑「いいじゃん、他には？」


スマホを取り出して、海斗の伝えたい言葉をメモする。1つずつ、海斗と一緒に声に出す練習をして、その日はあっという間に過ぎていった。

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