十二月、街中にて ページ5
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冬休み。周りの友人たちは受験ムード真っ只中だけど 私は推薦で一足先に進学先が決まった。
だからと言って勉強しなくていい理由にはならないのだけど、いかんせん学校が無いと周りに呑まれて勉強する、なんてこともなくて身が入らない。
家に親がおらず、誰にも咎められないのをいいことに、私は一人街に繰り出してショッピングをし、ファミレスで夕飯を食べた。
クリスマスの電飾がやけに寂しさを掻き立てるが 周りに誘える人間がいないのだから仕方ない。
さて、そろそろ帰ろうかとゆっくり足を進めていると、見覚えのある人影が向こうからやってくる。
人々が寒そうに背中を丸くする中、一人だけぴんと背筋を伸ばし 時折腕時計を気にしながら足早に歩くその人。
いつもなら自分から話しかけることはしないのに、何故か今日は声を掛けてみたくなってしまった。寂しさというのは怖いなと思う。
『北くん』
「……内田？何してん、こんな時間に」
北くんが珍しく目をぱちくりとさせている。なかなか表情を変えないので新鮮だ。
……しかし、何をしていたのかという問いが来るとは思わなかった。しまった、適切な回答が思い浮かばない。
苦し紛れに北くんこそ、と訊けば 彼は予備校に行った帰りなのだという。
北くんもセンター受験組らしく、その上未だに部活も両立しているのだというから頭が下がる思いだ。
暇だからと適当にぶらぶらうろついていた私とは訳が違う。
「で、内田は何しとったん」
『いや、その』
「……まあ無理には訊かんけど、こんな遅い時間に一人でおるんは 関心せえへんなあ」
『え、』
呆れたように、目を伏せる。
ゆらり、私の前に立った北くんは、少し屈んで私と目を合わせた。
「…送ってく。家どこやったっけ」
『え、いや、いいよ…』
「あかん、家ん人が迎えに来るんやったらええけど、違うんやろ」
『そうだけど…でも』
「ええから」
私を見つめる目にはほんの少し優しさが滲んでいた。
そうだ、北くんは口調こそ厳しいけれど 本当に優しい人なのだ。私はそんな北くんを好きになった。
今でこそそんな想いは届かなくて消えかかっていた。…なのに。
ふとした瞬間に優しさを見せて、私の気持ちを引き戻そうとするのはやめてほしい。
…諦められなく、なるから。
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はやみこ - 北さん…かっこいい！とても素敵なお話でした。 (2020年5月24日 12時) (
レス) id: d7eec8a8e8 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - えええ、大耳くん？？？それは意味深だよぉぉ。君も素敵な男やなぁ。これぞ甘酸っぱいお話ですね。誰かの恋の裏には言い出せもしない失恋が隠れてるのかな何て勝手に想像してしまいました。 (2020年4月30日 23時) (レス) id: 8c1d6118a6 (このIDを非表示/違反報告)
氷水(プロフ) - うわあああ…たまたま見つけて読んでしまいましたが、とても素敵でした…素敵な北くんのお話をありがとう… (2020年3月26日 1時) (レス) id: b2d8d7cb3b (このIDを非表示/違反報告)
an20080321(プロフ) - もうさいっっっこうです！！素晴らしい作品ありがとうございました、、！！ (2020年3月12日 21時) (レス) id: ee660bdd63 (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - ありすさん» ありすさんはじめまして、ありがとうございます...！！この作品で少しでも多くの方に北くんをもっと好きになって下さったら嬉しい限りです。コメントありがとうございました！！ (2020年2月25日 22時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月埜 | 作成日時：2020年2月14日 22時
