十月、教室にて ページ4
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一週間後に高校最後の定期テストを控えた十月後半。
私は教室に残って一人で勉強をしていた。家で勉強してもいいのだけど、苦手な数学を勉強する際にはすぐに先生に質問に行けるように、と 三年生になってから学校に残るようになったのだ。
外も暗くなってきて下校時間も迫っている。今解いている問題が終わったら帰ろう、とペンを走らせる手を早めた。
しかしもう少しで解けそうなのにどうにも答えが合わない。解説を見てもイマイチで、職員室へ向かおうかと席を立ちかけたとき。
「ん、……内田か」
『……北くん？』
教室の前方の扉ががらりと開いたと思えば、入ってきたのは北くんだった。
部活をしていたのか、Tシャツと短パンにえんじ色のジャージを羽織っている。見てると何だか寒そうだ。
「ちょお忘れもんしてしもて。内田は勉強か？」
『うん』
「こんな時間までえらいなあ」
『もう少ししたら帰ろうと思ってたんだけど、…ちょっと詰まっちゃって』
北くんは机の中から教科書を取り出すと、首を傾げつつ私の手元を覗き込む。
すまんな、と私の手を緩く掴んで 隠れていた箇所を見ようと退かす。待って、待って。
ノートを見つめる横顔は真剣で、はらりと前に垂れた髪の毛はさらさら。北くんが呼吸をする音さえ聞こえてきそうなほどの距離。
……息が、苦しい。
見上げればすぐそこに北くんがいて、彼が机に手を付いて前屈みになっているために手元が陰る。
…恥ずかしい。触れられた手が熱い。逃げ出したい気持ちでいっぱいだけど、生憎私の席は窓側だ。逃げ場が無いことに尚更心臓は音を立てる。
『…あ、の』
「…ここ間違っとる」
『えっ』
綺麗な指が数式を指差す。序盤から既に違っていたようで、言われた通り震えるシャーペンを動かせば あっという間に解けてしまった。
途中でコツだとかここの数式を使えばいいだとか言っていた気がするけど、はっきり言って何も頭に入らなかった。
『…ありがとう、北くん』
「おん、説明し慣れてへんのやけど 大丈夫やった？」
『うん』
「ならよかったわ」
そのまま去ろうとする北くんを呼び止めて、私は鞄から取り出したチョコレートの包みを手渡す。
北くんはその包みをしばらく見つめたあと、「おおきに」と柔らかく笑った。
ああ、もう。かっこよすぎだ、馬鹿。
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はやみこ - 北さん…かっこいい！とても素敵なお話でした。 (2020年5月24日 12時) (
レス) id: d7eec8a8e8 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - えええ、大耳くん？？？それは意味深だよぉぉ。君も素敵な男やなぁ。これぞ甘酸っぱいお話ですね。誰かの恋の裏には言い出せもしない失恋が隠れてるのかな何て勝手に想像してしまいました。 (2020年4月30日 23時) (レス) id: 8c1d6118a6 (このIDを非表示/違反報告)
氷水(プロフ) - うわあああ…たまたま見つけて読んでしまいましたが、とても素敵でした…素敵な北くんのお話をありがとう… (2020年3月26日 1時) (レス) id: b2d8d7cb3b (このIDを非表示/違反報告)
an20080321(プロフ) - もうさいっっっこうです！！素晴らしい作品ありがとうございました、、！！ (2020年3月12日 21時) (レス) id: ee660bdd63 (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - ありすさん» ありすさんはじめまして、ありがとうございます...！！この作品で少しでも多くの方に北くんをもっと好きになって下さったら嬉しい限りです。コメントありがとうございました！！ (2020年2月25日 22時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月埜 | 作成日時：2020年2月14日 22時
