同月、公園にて ページ29
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待ち合わせ場所に指定した公園に行くと 既に北くんが待っていた。
名前を呼んで駆け寄ると こちらに気が付いた北くんが目を見開いてぱちぱちとさせる。
ふにゃりと笑った彼は、数日前とは一変して顎下までばっさりと切られた私の髪に手を伸ばした。
北くんの距離の近さにはまだ慣れない。さわさわと緩く巻かれた髪を弄ばれるがまま、甘い表情と時折首筋に当たる指の熱さに 会って数秒足らずで既に逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。
「よう似合っとる」
『...ほんと？』
「おん、かわええ」
すぐ近くから降ってくる声にくらくらしそうだ。今日一日とても耐えられる気がしない。
ぱたぱたと火照る頬を手で扇ぐと、北くんはなんとも複雑そうな表情で 私に小さな袋を手渡した。
「そない短くなっとるなんて知らんかったから、これ使えへんかもなあ」
『え？なに、これ』
「開けてみて」
可愛らしく包装されたそれを テープを破らないようにそっと開ける。「えらい慎重に開けんな」とくすくす笑われながら取り出したそれは、淡い桜色が綺麗なリボンのヘアゴムだった。
『私にはかわいすぎない？』
「そうか？内田によう似合うと思うんやけど」
『でも、なんで急に』
はて、と首を傾げた北くんが 心配そうな声色で言う。
「...今日、誕生日とちゃうかった？」
『へ、』
そうだ、確かに今日は私の誕生日だから 北くんと一緒に過ごしたかった。自分から誕生日だと伝えるのは恥ずかしかったから それも全部隠していたつもりだったのだけど。
私から彼に誕生日を伝えたことなんてあっただろうか。目の前の男はびっくりして声も出ない私を目にして ゆるりと笑った。
『...ありがとう、北くん』
「喜んで貰えたならよかったけど、当分使えなさそうやなあ」
『そんなことないよ、髪短くても使えるし』
それに、と続けて 私は北くんの手に指を絡ませた。
『これから伸ばしていけばいいでしょ。一緒にいた時間が髪の長さでわかるのって なんか良くない？』
「＿＿＿ふふ、そらええなあ」
絡めた指がきゅっと力を込めて握り返される。
ほんのり薄く染まった北くんの頬に顔がにやけるのを隠しながら、春の匂いのする桜並木を歩き出した。
fin.
終わり
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はやみこ - 北さん…かっこいい！とても素敵なお話でした。 (2020年5月24日 12時) (
レス) id: d7eec8a8e8 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - えええ、大耳くん？？？それは意味深だよぉぉ。君も素敵な男やなぁ。これぞ甘酸っぱいお話ですね。誰かの恋の裏には言い出せもしない失恋が隠れてるのかな何て勝手に想像してしまいました。 (2020年4月30日 23時) (レス) id: 8c1d6118a6 (このIDを非表示/違反報告)
氷水(プロフ) - うわあああ…たまたま見つけて読んでしまいましたが、とても素敵でした…素敵な北くんのお話をありがとう… (2020年3月26日 1時) (レス) id: b2d8d7cb3b (このIDを非表示/違反報告)
an20080321(プロフ) - もうさいっっっこうです！！素晴らしい作品ありがとうございました、、！！ (2020年3月12日 21時) (レス) id: ee660bdd63 (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - ありすさん» ありすさんはじめまして、ありがとうございます...！！この作品で少しでも多くの方に北くんをもっと好きになって下さったら嬉しい限りです。コメントありがとうございました！！ (2020年2月25日 22時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月埜 | 作成日時：2020年2月14日 22時
