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五月、体育館裏にて ページ13

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初夏、照り付ける日差しが一層強くなった頃。









『___北くんのことが好きです。付き合ってください』









心臓が止まるかと思うた。


話したいことがある、とやけに緊張した面持ちの彼女___内田が、いきなりそんなことを言ったから。


普段の彼女やったらその場で要件を伝えてくるはずやのに、指定したのは部活でいつも使っている体育館の裏。


何か言い難いことでもあるんか、そう思って来てみれば、彼女が伝えてきたのは俺への告白やった。




自分が感情がそのままストレートに表情に出るタイプやなくて良かったと心底思った。




表情に出やすい代表のどっかの双子の片割れを思い浮かべながら、俺は一つ息をつく。


今から俺は彼女にとって、___俺にとっても、やろうか。少し残酷な答えを告げなければならない。









「…すまん、今は部活と勉強が優先やから」









彼女よりもその二つが大事やとか、そういうつもりはなかった。俺と彼女のため、そう思っての俺にとって最善の答えやと思っとった。




それでも、好きな相手からの告白を断るいうんは、こんなに辛いもんなんやな。


下を向いた彼女は口角を吊り上げた。今にも泣き出しそうな表情で、必死に笑顔を保とうとした。


満面とは言い難いその笑顔は、普段の緩い笑顔とはかけ離れていて キリキリと胸が痛むような感覚。









「ほんま、ごめんな」









今の俺には、こう言うことしか出来ひん。


内田、ほんまにごめん。お前の告白、めっちゃ嬉しかった。


せやけど、いつか。


せやな、…卒業式の日。お前が許してくれるのなら、次は俺から言わせて欲しい。









ぎらぎらと光る太陽を見上げ、俺はいつになく背筋を伸ばし 気合を入れ直した。









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同月、教室にて→←刻は遡る



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はやみこ - 北さん…かっこいい!とても素敵なお話でした。 (2020年5月24日 12時) (レス) id: d7eec8a8e8 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - えええ、大耳くん???それは意味深だよぉぉ。君も素敵な男やなぁ。これぞ甘酸っぱいお話ですね。誰かの恋の裏には言い出せもしない失恋が隠れてるのかな何て勝手に想像してしまいました。 (2020年4月30日 23時) (レス) id: 8c1d6118a6 (このIDを非表示/違反報告)
氷水(プロフ) - うわあああ…たまたま見つけて読んでしまいましたが、とても素敵でした…素敵な北くんのお話をありがとう… (2020年3月26日 1時) (レス) id: b2d8d7cb3b (このIDを非表示/違反報告)
an20080321(プロフ) - もうさいっっっこうです!!素晴らしい作品ありがとうございました、、!! (2020年3月12日 21時) (レス) id: ee660bdd63 (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - ありすさん» ありすさんはじめまして、ありがとうございます...!!この作品で少しでも多くの方に北くんをもっと好きになって下さったら嬉しい限りです。コメントありがとうございました!! (2020年2月25日 22時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月埜 | 作成日時:2020年2月14日 22時

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