春、恋に落ちて。2 (ページ9)

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ぱたんっと締まったドア。

「…Aちゃん、大丈夫？」
けんちゃんがわたしを心配してくれる。

「うん、大丈夫…」

「あたし何も知らないんだけど…さっきの本当なの？」

「…さっきの？」

「その…玉森くんのこと」

素直にこくんと頷くと、けんちゃんがわたしを抱きしめてくれた。

「そっか…理央と玉森くんが前に付き合ってたのは知ってたけど、ヨリ戻したとは…」

…だからか。
玉森裕太が昨日うちに来て優しくしてくれたのは。

最後に謝ってくれただけだったんだ。
謝って終わりにしてくれただけ。

それで今朝は前の玉森裕太みたいに接してきたのね。

もう櫻井さんとのことは大丈夫だって、断ったって言ってたのは
わたしを傷付けないための彼なりの優しさだったのか。

どうして「待ってて」なんて言ったんだろう。
そんなこと言われたら期待してしまうのに…

そっか、そういうことを平気で言うからロクでもない男なんだ…

「…ほんと、ロクでもない男に捕まっちゃった。
わたし馬鹿だなあ…」

泣きそうだったけど、せっかくけんちゃんが施してくれたメイクを崩したくなくてぐっと堪えた。

「Aちゃん大丈夫？」

仕事なんだから切り替えなきゃ。
みんなに心配をかけるわけにはいかない。

「余裕よ！大丈夫！
けんちゃん続きお願い！」

そういって鏡の前に座った。

櫻井さん、本当にわたしの気持ちに気がついてて
釘を刺しに来たんだろうな。

わたしが元気に振る舞う様子を見て、
けんちゃんもいつも通り接してくれてありがたかった。

ただ遊んでいただけ。
それなのにわたしが勝手に好きになった。
好きだから傷付けられてもいいと思って玉森裕太に近付いたんだ。

でもやっぱり彼の根本にあるものは変えられなかった。

けんちゃんも綾香も「気を付けろ」って忠告してくれてたのに、それを無視して好きになって傷付いて。

本当にわたしは馬鹿だ。