春、恋に落ちて。2 (ページ7)

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57 Yuta side ページ7

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＂ちゃんと＂好き

自分に言い聞かせるようにしてた。
Aのことが＂ちゃんと＂好きだ、って。

多分あの時の理央も言い聞かせてたんだろう。
俺のことを＂ちゃんと＂好きだと。

満たされたい、愛されたい…
そんな気持ちを不特定多数で満たされる訳なんかないのに。

でも俺はアイドルなわけで、結婚なんかしばらくは出来ないし。
ひとりに絞っても、幸せにしてあげられないから。

Aとは付き合わない方が、Aの為だ。

不特定多数の中のひとりだったAを
いまは特別な存在だと思っている。

俺の腕の中で眠るA。
好きだ、この寝顔も全部が好きだ。
でも俺じゃAを幸せにしてあげられない…と思う。

翌朝、「仕事早いから」と告げてAより先に家を出た。

本当は早くなんかないんだけど、Aを裏切ってる気がして。

だってAに会いたくて謝りたくてAの家に来たから。

俺のこと好きでいてくれるのに、
俺だって好きなのに、
お互いの立場も邪魔して進めない。

理央のせいなんかじゃない。
俺のせいだ。

こんなに好きになって悩むくらいなら
前みたいに、いろんな女と遊んでればよかったな。

そしたらお互いに苦しまずに済んだのに…

なんて思う最低な俺。