25* ページ26
菖蒲さんについては深く語る必要もない。
一つだけ言っておくとすれば、
彼女は優しかった。
ただそれだけ。
だけど、それだけで当時の私は十分すぎる幸せを感じることができた。
父の姉、つまりは叔母さん。
その叔母さんは、私に何もしなかったから。
だから、菖蒲さんが優しいことは私にとって一番の救いだった。
叔母さんには、門限を過ぎれば殴られはしたし、外に出されて一晩を過ごしたこともあった。
…でもそれは自分が悪かったから。
勿論、両親が生きていればこんなことになるはずなかった。
世の中には私より苦しい人がいる。
私が一番の被害者かのように生きていくのは可笑しな話だ。
…それでも、当時13歳の私には受け止められないことのほうが多かった。
夜中に目が覚めて泣いたことがあった。
寝ぼけていたのか、大声を上げて泣いてしまった私を叔母さんは
怒鳴りつけて、
殴って、
蹴って、
髪の毛を鷲掴みにされて、
引きずられて、
真冬の外に放り出されて、
「外で泣き散らしてみろ。二度と家に入れると思うなよクソガキ。」
そう言われて、
鍵を閉められた。
あの日のことは忘れない。
恨みじゃない。
ただただ恐怖だったのだ。
トラウマになってしまったのだ。
忘れない、じゃない。
忘れられない。
…
……
『…と、言う感じで、長くなってしまったんですが…。ようするに‘‘人”と触れ合うのが怖いんです。』
いろいろと思い出してはいたが、実際に山姥切さんに話したのは
両親が亡くなったこと
叔母さんに引き取られ、軽い虐待を受けたこと
だから人が怖いということ
くらいだった。
山姥切「…すまない。嫌なことを思い出させてしまったな。」
申し訳なさそうな声色の彼を見ることはまだ叶わない。
『いえ、変えることはできないものですから。嫌でもなんでもこれが私の人生でしたから。』
彼の顔が認識できないため、畳の上に横たわる刀に向かって返事をすることにした。
山姥切「そう、だな。…主、俺の考えだから間違っているかもしれないが、聞いてくれるか？」
間違いだろうがなんだろうが聞くしか選択肢はないように思った。
『もちろん。是非、聞かせてください。』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 821人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユウカ(プロフ) - 愁(しゅう)さん» 初期刀まんばちゃんなんですね！私は宮崎と同じむっちゃんです！笑 初期刀って愛着湧いちゃいますよね〜(*^^*) (2016年12月6日 8時) (
レス) id: fc6ad45da9 (このIDを非表示/違反報告)
ユウカ(プロフ) - 花日松さん» いえいえこちらこそわかりにくい表現をしてしまって申し訳ありませんでした！ご丁寧に返信までありがとうございます！ (2016年12月6日 8時) (レス) id: fc6ad45da9 (このIDを非表示/違反報告)
愁(しゅう) - 僕と初鍛刀が同じなことに悶えました← (2016年12月5日 22時) (レス) id: 47c2114946 (このIDを非表示/違反報告)
花日松(プロフ) - ユウカさん» そうだったんですか！すみませんちゃんと見てなくて！ (2016年12月5日 13時) (レス) id: 6d8f5ab43f (このIDを非表示/違反報告)
ユウカ(プロフ) - 花日松さん» コメントありがとうございます！冷却材のほうは一応31話のほうで書いているのですが、作者の解釈で大変わかりにくい表記になっていますね…。申し訳ありません！今後はわかりやすいように尽力します！更新頑張らせて頂きます！ (2016年12月5日 12時) (レス) id: 090ea0c50e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユウカ | 作成日時：2015年9月3日 21時
