検索窓
今日:16 hit、昨日:4 hit、合計:33,052 hit

ページ24

yb




「…自分で、ちゃんと、考えられるようになりたい」


「…うん」


「そのためには、まず、色んなことを知らないといけないかなって…」


「それで、勉強?」


「うん…。

こういうの、薮ちゃん以外の誰に聞けばいいか、分かんなくて…」




だめかな…?

そこまで言って、大ちゃんは黙ってしまった。



ハウスに来て1か月半。

大ちゃんは、あまり自分の欲を口にしなかった。

その大ちゃんが、自分からやりたいと言ったという事実だけで、俺は嬉しくて。



だから俺としては、大ちゃんのその気持ちを大切にしたい。

その一心だった。





「大ちゃんの気持ち、よく分かったよ」


「…うん」


「俺としては、大ちゃんがやりたいことを精一杯サポートしたい」




まっすぐにそう伝えると、不安な色が少し消えた。




「ただ、」




でも、問題もあった。

それを伝えないわけにはいかない。


ただ、と言い出したおれに、大ちゃんは俯いてしまう。

大ちゃん、顔上げて、と声を掛けると、困った顔のまま俺を見た。





「俺もね、そこまで詳しくないんだ」


「え……?」




ごめんね、と前置きして、言葉を続けた。




「俺は、高校も大学も行って、割とまじめに勉強してきた。

昔からの知り合いの光と雄也も、似たような感じなんだよね」


「うん…」


「だから、勉強したいって言ってる大ちゃんに、どういう方法を提案してあげればいいか、あんまり分かんないんだよね」


「そっ、か……」




俺は、幸せなことに、何不自由なく暮らしてきた。

だから、どこかで困ってしまった人に対して、俺の経験からアドバイスできることをそう持っていなかった。


残念そうな顔をした大ちゃん。




「だからね、大ちゃん」




でも、このまま終わらせない。

そういう人の手助けをしたくて、俺はここにいるんだから。




「少しだけ、時間をちょうだい」




そう言うと、大ちゃんは不思議そうに首を傾げた。




「大ちゃんがやりたいことをやれるように、選択肢を準備するから。

そのための時間がほしいの」


「でも……」




忙しくない…?と気をつかってくれる。




「大丈夫だよ。俺がやりたくてやってるんだから」




みんなにも同じようにしてきたしね、と言うと、少し安心した表情に変わる。




「…じゃあ、お願いします……」


「うん、任せといて」




大ちゃんは、さっきまでと打って変わって、嬉しさが隠せない顔で笑った。

・→←やりたいこと



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (46 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
175人がお気に入り
設定タグ:有岡大貴
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:まり | 作成日時:2022年10月30日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。