ゆるやかな坂 (ページ16)

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藤「……ひろ…」

切れた電話
きっと、もう繋がらない

二度と

会えない……

藤「…ひろ…っ…」

横「太輔…」

藤「…俺っ、でも…だって…！…」

力が抜けてその場に崩れるように渉にすがった
渉は自分のことみたいに顔を歪めていた

藤「……どうしよう…っ」

横「太輔っ…大丈夫、大丈夫だからっ」

聞こえてるはずの渉の言葉も認識出来ないくらい
頭の中はひろで埋め尽くされてる

きっとずっと大好きだった
ひろも俺を好きだった

でも俺は汚いから
純粋な君に同じ愛は返せないから

怖くて

藤「…ひろっ…」

ひろなら、
また、笑ってくれると思ってたのに

取り繕ったあの笑顔で良かったのに。

横「太輔…もしかしてみっちゃんに告白された？」

藤「……」

横「…断ったの？好きなのに？」

何も話してないのに、何で渉には分かるんだろう
同じことがあっても俺は渉のこと、分からないよ

横「太輔は、自分だけが好きだもんね」

そう近付いた渉
触れた唇は冷たかった

横「ね、…」

そっか

藤「…うん、そうだよ」

北山を傷付けてでも傷付きたくなかった

だから、

世界で1番好きだったけど…

藤「…っ…」

…間違えた…

間違えたんだ…

横「たい…」

藤「…わた、ごめん…」

横「……」

ひろが好きだ…

藤「…ひろがいいっ…」

横「うん」

藤「ひろが好きだよ」

渉が見えなくなるくらい涙が出てきて
カッコ悪いけど、どうしても止めれなかった

君はもう、俺と話すことを
許してくれないかもしれないのに

溢れて止まらなかった

横「愛は1種類しかないんだから
伝えていいんだよ、友達でも家族でも

太輔は、みっちゃんが好きなんでしょう？」

…伝えれるかな

横「まだテストもあるし、
あと2カ月は日本にいるんじゃないかな」

藤「…2カ月…」

隣で笑って
ひろを抱きしめたい

それが叶わなくても

全部失っても

君だけが欲しい気持ちは無くならないんだ

横「……太輔、頑張れ」

藤「…ありがとう、わた」

例え状況は分かっても
心の内までは分からない

だから伝えなきゃいけない。

けど、俺は分かって欲しいことだけしか話さない
渉やひろは相手が聞きたいことを話してくれる

それはひどく、優しい