Can't Say Goodbye【1】

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樹side



本気で小野さんのこと好きになったわけじゃない

ただ、好きな人のために夢を掴もうと頑張る北人さんの姿を誰よりも近くで見てきたから、忘れられたかもしれないくらいで諦めて欲しくなかった

｢俺が貰う｣って言ったら、北人さんならダメだって止めてくると思ったのに、何も言ってこなかった


本当にこのまま諦めるつもりなんだろうか







自販機に向かって歩いていると、なぜかさっき別れたはずの人がいた




樹｢小野さん？｣


『あっ、藤原くん…！』


樹｢なにしてるんですか｣


『えーっとですね…』



……もしかして





樹｢迷子ですか？ ｣


『……恥ずかしながらそうなんです、良い歳して迷子だなんて馬鹿ですよね…』



向かおうとしたメイク室が分からなくて加藤さんに電話したけど出てくれなくて、さっき別れてから今までずっと歩き回っていたらしい

そういえば北人さん、｢あいつ方向音痴だからすぐ道迷って『ほくちゃん〜泣』って電話してくるんだよ笑｣っていつか言ってたな





樹｢俺案内しますよ、行きましょ｣


『え？！けど今から合わせ？なんじゃ』


樹｢……休憩時間なんで大丈夫です｣



そう言いながらこっそり慎に｢腹痛くて遅れる｣とLINEした



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