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未来ちゃんが出ていった後、少しの静寂が走り、すぐにくすくすと私の小さな笑い声が響いた。
『元気だよね、未来ちゃん。』
「うん、俺もあんなにはしゃぐ未来は、初めて見るかもしれない・・・。」
『・・・かわいいよね、未来ちゃん。』
「ああ。」
甘い笑みを浮かべた司くん。
あはは、こんな笑顔見たら南ちゃん昇天しちゃうかもね。
「・・・君に未来のことを頼んだ時、一瞬だけ、うん、失敗したと思ったんだ。」
『え?』
司くんの方を見れば、彼は申し訳なさそうな顔で私から顔をそらした。
「・・・俺が眠る直前、弟のことを話してくれただろう。」
『・・・。』
「まだ弟の面影を追っているように見えた君に、未来のことを頼んだのは失敗だったと思ったんだ。」
『・・・そんなことはないよ、とは、言い切れないなぁ・・・。』
私は苦笑いを浮かべながら頬をかいた。
『実際ちょっと、参っちゃった時期があって・・・あ、でも別にそれは司くんのせいでももちろん未来ちゃんのせいでもないよ。
・・・私の気持ちが弱かっただけだから・・・。』
顔を下に向け、手元を見た。そこにはほのかにキンモクセイの香りがするお守りがある。
『・・・未来ちゃんや、他の子供たちと過ごしているとき、何度も弟と重ねてしまったの・・・。なんで、ここにあの子がいないんだろうって、未来ちゃんに嫉妬してしまったときもあった。』
「・・・。」
『でも、もう大丈夫・・・私もあの子も、今は一緒のミライを歩いているから。』
顔をあげて再び司くんの顔を見れば、彼は安心した顔をしていた。
『ふふ・・・むしろ昔を思い出してすごく楽しかったよ。』
「・・・そうか。うん、君が大丈夫なら、それでいい。」
「聖さーん!おまたせー!」
未来ちゃんが戻ってきた。
手に持っていた花は残念ながら私が探していた薬用の花ではなく、未来ちゃんは落胆した。けど、すぐに明るい笑みを浮かべた。
『さて、じゃあそろそろ司くんにも働いてもらわなくちゃね。』
「うん、俺はまず、なにをすればいいのかな。」
『私が石化していた場所、薬師寺大学跡地に行きたいの。目的はあそこで自生しているかもしれない新たな薬草を見つけること。それと・・・。』
「大学にいた医療従事者たちを起こす、だね。」
『あはは、正解。』
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まっちゃ(プロフ) - コメント失礼します!ネタバレになってしまうので内容は書けませんが、番外編、とても面白いです!これからも弥さんの無理のならない範囲で、更新頑張ってください!影ながらも応援しています! (2021年4月18日 1時) (レス) id: 064c02c015 (このIDを非表示/違反報告)
弥(プロフ) - わわわわわさん» 申し訳ありません。番外編のリクエストは受けつけていないんです。また番外編を書く機会があればぜひ書かせていただきます。 (2021年4月17日 22時) (レス) id: 28d3fee7a9 (このIDを非表示/違反報告)
わわわわわ - 番外編のリクエストです。耳攻めされたと羽京がドS化したお願いします。 (2021年4月17日 22時) (レス) id: 9c9d4f1707 (このIDを非表示/違反報告)
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