episode４１ ページ43
「……俺の、ファン？」
泉くんは、つぶやくようにして私の言葉をなぞった。
思わずうつむききゅっと唇を嚙んで、自分の震えを抑えようとする。
泉くんがどんな反応をするのかが、怖かった。
失望、怒り、呆れ？
思いつくものはどれもマイナスな感情で、やるせなさが襲ってくる。
「だっ、から、もうこうやってプライベートの泉くんには、会えないです……っ！！！」
嘘をついてて、すみませんでした。
そう言って頭を下げる。
じわりと視界が歪んで頬に熱いものが伝った。
これは何の涙なんだろう。
泉くんに嘘をついていた罪悪感？ それとももう"ズル"して会えなくなる辛さ？
自分では分からない。
もちろん、他の誰にも分らない。
ふと足の力が抜けてしまい、ガクっとその場にしゃがみこんでしまった。
立て、立て、と命令しても膝が言うことを聞いてくれない。
「──！」
そんなとき、ぽん、と私の頭に手が置かれた感触があった。
そしてそれは、撫でられる感触に変わる。
「い、泉くん……？」
「急にかしこまったから何のことかと思ったら──そんなこと？」
私と視線を合わせるためか、泉くんがもしゃがみこんだ。
優しい笑顔ですっと見つめてくれている。
私はなんだかきまりが悪くて、目を逸らしてしまったけれど。
「そんなことって……結構大事なことだよ」
少しかすれた声で言い返す私に、泉くんが尋ねた。
「Aが俺のファンって、それ、いつから？」
「えっと……"チェックメイト"の日から、です」
しどろもどろになりながらも伝える。
泉くんが軽く笑った。
「３年も前じゃん。そんな前から俺のこと応援してくれてたんだ〜？」
からかうような、そんな笑顔にも見えた。
「わ、悪いですか……！！？」なんて返せば、再び何もかも包み込んでくれそうな優しい笑みを向けられる。
「なわけないでしょ。──うれしいよ、ありがとうお姫さま」
少しだけ強く、でも割れ物を扱うように丁寧に、もう一度頭をなでてくれる。
心臓の高鳴りは最高潮に達し、私は何かの限界を感じて手で顔を覆った。
「そういうのを……！ 私だけが受け取っちゃダメなんです、他のファンの子に失礼だから……っ！！！」
すごくうれしいのに。
本当は、もっと自分だけを特別扱いしてほしいのに。
自分の感情を一般論で上書きして、大好きな人にぶつける。
「最初に出会った時点でファンとアイドルなんだから、本当は私がちゃんとマナーを守って距離感を保つべきだったのに……！」
「──ごめんだけど。それは、違う」
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咲愛(プロフ) - ﾂｷさん» コメントありがとうございます！始まった頃から読んでいただけているとは、大変うれしいです！続きは本日中に公開出来たらと思ってますので、ぜひぜひ今後ともよろしくお願いします！ (2023年2月22日 16時) (
レス) id: 8b89f62398 (このIDを非表示/違反報告)
ﾂｷ(プロフ) - この作品が始まった頃から楽しく読ませて頂いてます！毎日更新が楽しみで素敵な作品に出会えたなと思いました！続き楽しみに待ってます！ (2023年2月21日 22時) (レス) @page50 id: 56454ebf31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：咲愛 | 作成日時：2023年1月27日 12時
