純情ラ・プラトニック〈男主〉 (ページ9)

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side桃

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きっと元々、良い奴でも何でもなかったんだと思う。

ただ自分を隠したり押し殺したりするのが上手かっただけで。

そうじゃなければこんな悪役、平然と出来ねぇよ。

『おはよう』

「おはようございます」

数日ぶりに一緒のタイミングで楽屋に入ってきたコイツらを全員が横目で見た。

ラウールは今日とて制服姿でAが学校まで迎えに行ってそのまま仕事に来たことが伺える。

机の上で課題を広げ始めたラウールの横には当たり前のようにAがいて、問題を横から覗き込んでいる。

仲良いなお前ら！

なんて笑って言える関係値ならよかったのに。

ラウールがAの事をそういう目で見ている、なんて話を聞いたのはいつだったか。

それを聞いたメンバーが起こしたアクションすらはるか昔の出来事に感じる。

メンバー数人から牽制という名の釘を刺されたはずの二人はどうなったのか、なんて。

『⋯⋯佐久間ぁ、塗ってくれない？』

「もちろんいいよーん」

いつの間にかAが俺の近くいて、小さな透明な瓶を差し出していた。

昔から手のケアを欠かさないAはネイルオイルをよく塗っている。自分の爪を塗るのは難しいらしくメンバーが手伝うことが多かったり。

『ありがとう』

座ったAの手を取ってひとつひとつ丁寧に塗り進めていく。柑橘系の香りが鼻をくすぐった。

程よく甘酸っぱいその香りに顔が綻ぶ。

「めっちゃいい匂いすんね。俺好きー」

『だよね。佐久間もネイルオイルやれば？なんならこれ終わったら俺が塗ろうか？』

「マージー？」

なにそれ、ってAが笑う。

かわいい。

⋯⋯やっぱさっきの撤回するわ。

お前は良い奴だよ。最高に優しくてちょっとだけ気が弱いけどね。

「じゃあ⋯⋯」

ふいに鋭い視線を感じて顔を上げた。

"ガチの目"と目が合ってしまって、俺の口は勝手に「やっぱいいや」と言っていた。

＿＿＿本当の悪役は、誰かなんて