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余計なモノは、全て棄ててしまおう。
いのちゃんが俺にあいつを投影している
という虚しささえ受け入れてしまえば、
答えは驚く程シンプルだった。
…
あの夜、いのちゃんは俺の手を引いてくれた。
この4年間、いのちゃんと暮らした日々は
幸福で温かだった。
いのちゃんは、俺の胸を熱くする。
軋む天井に、俺は夜毎嫉妬する。
苦しくて、切なくて、
それでもずっと一緒にいたいって…
そう恋願うのは、
いのちゃんを愛しているから。
…
それは、子供にも分かる程短絡的な理論だっ
たけど、引き上げられた価値観に囚われて長年
大人のふりをして生きてきた俺には、やっと
やっと辿り着いた確かな終着駅だった。
「……あいつの代わりでも良いんだ、
俺のことずっと側に置いて…っ 」
格好付けるのもやめた。
だから、涙が溢れて止まらないのも、本当は
強く包み込むつもりだった腕でいつの間にか
いのちゃんにすがり付いているのも、仕方な
いと思えた。
「……りょうすけ、顔上げて。」
すっかり逆転した体勢でいのちゃんは、俺を
抱き締めて、頭上から優しい声を降らせた。
手のひらで両頬を包み込み、白く華奢な指先
でさわさわと掠める様に撫でられる。
その動きに誘われて、ゆっくりと顔を上げれ
ば、目の前には柔らかな瞳。
確かに交わる俺といのちゃんの視線。
いのちゃんは、“ 俺 ” を見ている。
「…似てない、」
「………えっ?」
いのちゃんが前触れもなくそう口を開いたから、
何とも間抜けな声が出た。
こんな時でも、緊張をスルスルと解いてしま
うのがいのちゃんらしい妙技だ。
「だから、似てないって言ったの。
涼介は、“あの人”に全然似てない。」
「似て、ない……の?」
いのちゃんは、怒っていた。
怒っているのに、何故か泣きそうな顔をする
から俺は更に戸惑ってしまう。
「 どこが似てるの?
あの人は、俺を抱くだけ。
“お客さま”なんだから。
毎日毎日、温かいご飯を作ってくれて、
裸で彷徨く俺を咎めてくれて、頼まなく
てもお水を補充してくれて、お風呂はい
つも適温で、
増える傷跡気にしてくれたり、良く効く
薬探してくれたり……
“ただいま”って必ず俺のところに帰って
来てくれる、
そんな可愛い奴、涼介しか知らない 」
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ぴよ(プロフ) - あいとさん» あいとさん、ありがとうございます( ´∀`)凄く久しぶりに二人に想いを馳せてみました。私もここ迄辿り着く過程を思うと万感の思いです。幸せに過ごしてほしいなぁ♪ (2018年6月25日 12時) (レス) id: 20d979f9fd (このIDを非表示/違反報告)
あいと(プロフ) - ぴよさん!ろくでもない夜にファンの私にはとても嬉しいお話でした!この日までよく頑張ったね二人…、いのちゃんこれからは大好きな人にだけ甘やかしてもらうんだよ…となぜか親心…(笑)素敵なお話ありがとうございました! (2018年6月24日 7時) (レス) id: 6689a85a28 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» にゃーごさんこちらにもありがとうごさいます。このお話は当然完璧なフィクションなのですが、その中でも心の動きがなるべく自然に繋がる様にそれぞれの気持ちを想像して書きました。同じ様に感じて貰えて嬉しいです( ´∀`)妄想は最高ですね 笑 (2017年4月28日 22時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーご - ぴよさん こんにちは。私がぴよさんに夢中になった作品は実はこの作品でした。あの子は実はこんな気持ちじゃないかな?なんて妄想が広がった時に胸にトンと降りてきてもう、ぴよさんワースドから抜け出せません。 (2017年4月28日 9時) (レス) id: a963f855a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 綺更さん» コメありがとうごさいます。最後まで読んで下さってとても嬉しいです。私も書きながらもどかしく、皆を幸せにしてあげれるのか不安になったりもしたのですが、無事完結出来てホッとしています。涙ぐんで頂けたの事で感激です!また面白いお話をお届け出来る様頑張ります (2017年1月14日 3時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
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