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「……ち、ねん、俺…もう、っ…ぅ」


もう、駄目かもしれない。
言ってはいけないことだって分かってたのに。
いのちゃんとの4年間をこんな風に終わらせた
くなかった、

なんて…、俺の勝手かもしれないないけど。


「ほらっ、こっちおいで。
何か温かいものでも飲もう。」


知念は、ポロポロと情けなく涙を落とす俺の
手を引いて室内に招き入れた。

知念に紅茶を淹れてもらえる日が来るなんて。
お湯を注ぐ知念の手元が妙にしっかりし
ていて、意外だった。
いつもなら“涼介、喉渇いた”って甘えてくる
のに。

「どうぞ。
僕がお茶淹れるなんてこれが最後かもよ。」

悪戯っぽく笑った知念が赤色のマグカップを
手渡してくれる。
穏やかな香りは、物騒な俺の心中を宥めて
そっと優しく包み込む。

この裏口から続く階段は、知念の部屋に直接
繋がっており家人と遭遇する事はない。
当初は、店内の通路を利用していたらしいが
それを嫌った知念は中学に上がった際、この
裏口をせがんだのだという。
家業が原因で孤立していた過去を経て、少し
離れた私立の中学を受験した経緯がある。

…知念は、色んな“痛み”を知っている。


「……ありがと、知念。

知念が居てくれて、良かった。」


丸いテーブルを囲んで、隣り合った俺達は
肩を寄せ合い温かい紅茶を飲んだ。
触れあう肩のぬくもりが俺を安心させる。
暫く無言のまま、お互いにマグカップだけを
口に運んだ。


“ガタンッ”


知念が空になったマグカップを無造作にテー
ブルに置いた。
……置いたのだと思う。
静けさを破る音が、俯いたままの俺の耳に届
いたから。



「…可哀想な涼介。

いのちゃんは、分かってるのかな?
涼介がこんなに心を痛めてること。」


知念が俺の肩にこてんと頭を乗せながら、
嫌に落ち着いた口調でいのちゃんを咎めた。
甘える様な仕草とは対照的な物言いに、少し
の違和感を覚える。


「ううん、分かってる筈ないよね。
涼介のことちゃんと知ってるのは、

“ 僕だけ ” だもん。」


フワッと羽みたな軽やかさで身を翻した知念
を一瞬見逃してしまった。
再び、向かい合った知念を視界の端に捕らえ
た次の瞬間、



俺の唇に柔らかな何かが押し当てられた。

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設定タグ:Hey!Say!JUMP , BL   
作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - あいとさん» あいとさん、ありがとうございます( ´∀`)凄く久しぶりに二人に想いを馳せてみました。私もここ迄辿り着く過程を思うと万感の思いです。幸せに過ごしてほしいなぁ♪ (2018年6月25日 12時) (レス) id: 20d979f9fd (このIDを非表示/違反報告)
あいと(プロフ) - ぴよさん!ろくでもない夜にファンの私にはとても嬉しいお話でした!この日までよく頑張ったね二人…、いのちゃんこれからは大好きな人にだけ甘やかしてもらうんだよ…となぜか親心…(笑)素敵なお話ありがとうございました! (2018年6月24日 7時) (レス) id: 6689a85a28 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» にゃーごさんこちらにもありがとうごさいます。このお話は当然完璧なフィクションなのですが、その中でも心の動きがなるべく自然に繋がる様にそれぞれの気持ちを想像して書きました。同じ様に感じて貰えて嬉しいです( ´∀`)妄想は最高ですね 笑 (2017年4月28日 22時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーご - ぴよさん こんにちは。私がぴよさんに夢中になった作品は実はこの作品でした。あの子は実はこんな気持ちじゃないかな?なんて妄想が広がった時に胸にトンと降りてきてもう、ぴよさんワースドから抜け出せません。 (2017年4月28日 9時) (レス) id: a963f855a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 綺更さん» コメありがとうごさいます。最後まで読んで下さってとても嬉しいです。私も書きながらもどかしく、皆を幸せにしてあげれるのか不安になったりもしたのですが、無事完結出来てホッとしています。涙ぐんで頂けたの事で感激です!また面白いお話をお届け出来る様頑張ります (2017年1月14日 3時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2016年8月30日 20時

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