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「…気のせい、かしらね。」
「なんか含みのある言い方だねー。」
「カルマ、貴方は何も感じない?」
「いや、別に?」
「じゃあ多分気のせい、ね。」
さっきから監視されている気がしていたのはきっと気のせい。昔からの悪い癖だ。少女は言い聞かせてその違和感を無視することにした。
「ふーん。」
「へぇ、祇園って奥に入るとこんなに人気ないんだ。」
「うん。一見さんお断りの店ばかりだから、目的なくふらっと来る人もいないし、見通しが良い必要もない。だから私の希望コースにしてみたの。暗殺にピッタリなんじゃないかって。」
「流石神崎さん!下調べ完璧!じゃあここで決行にきめようか!」
「マジ完璧。何でこんな拉致りやすいとこあるくかね。」
少女はため息をつく。違和感はこいつらのせいか。確かこの制服は新幹線の時神崎さんがぶつかった高校生と同じもの。さしずめそこで落としたスケジュール帳を拾って悪さをしにきたというところだろうか。
「気のせい、じゃなかったねぇ。」
「なに?お兄さんら、観光が目的っぽくないんだけど。」
「男に用はねぇ。女置いてお家に…。」
吹っ飛んだ高校生を見て少女はつぶやく。
「あーあ。こりゃ穏便に、とはいかなくなっちゃったねぇ。ま、最初から無理か。各一人ずつ相手すれば勝てるんじゃない?」
「いや、無理だよ!」
「え、ほんとに?まさかまともに戦えるのカルマと私だけ?」
暗殺の練習してるんじゃないのかい。と言いたいところだがおそらくまだ始めの方なのだろう。喧嘩慣れしてるカルマはともかく、他全員を守りながらとなると…負けておいた方が人間らしいのだろうか。
「てめぇ刺すぞ!」
「刺す?そのつもりもないのに?」
「ほら、次は誰かしら?それじゃあ私は捕まえられないわよ?」
ある程度戦ってわざと負ければいい。幸いな事に少女の能力は融通が効くから一時的に能力を抑える事なら容易である。
「あっはは。どこ狙ってんの?」
「…狙いは、お前じゃない。」
「…っ!」
少女の後頭部に衝撃が走った。それなりの大きさの石をぶつけられたことを理解するのに時間は掛からなかった。本来なら痛くも痒くもないのだが、あくまで一般的な人間を演じておかなければならない。ここは怯んでおこう。まぁ怯んだら十中八九捕まるけど。この子達には悪いけど一時的に捕まってもらうしかない。
「ちょっとだけ遊んであげるわ。」
誰にも聞こえないよう少女はつぶやいた。
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作者名:夜桜 | 作成日時:2020年10月10日 18時