殺し屋やってるらしい。2【浦島坂田船】

killing night 85 ページ37

『あの人たち最期のお別れを言わせてください。』

それも、こんなところではなくて無理言ってあの廃ビルまで移動した。
私は何か大切なことをしたり言ったりする時は先生と過ごしたあの廃ビルに行くようにしている。

先程からずっと電話をかけ続けてくれていた坂田にかけることにした。
ワンコールが鳴り終える前に繋がった。

坂田の声は泣きそうで多分本気で坂田に怒鳴られたのはこれが初めてな気がする。
私もなんだか泣きそうになった、散々迷惑をかけた挙句自ら彼らを裏切るようなことをするのだ。
今私に泣く権利なんてない、私を大切だと言ってくれた彼らがきっと今泣きたいのだ。

迷惑かけたなりに一人一人に感謝を言いたくて記憶の思い起こす限りの言葉を並べた。
そしてうらたの時、頭が真っ白になる感覚があってうらたを想えばただ好きという気持ちしか浮かんでこなかった。
言うつもりもなかったのについ言葉に出してしまった。

最期のさよなら言い終えてから腕をガクリと落として視線を男へ向けた。

私の思考とは忙しいものでよく気が変わるものだと自分でもわかっている。

ただ直感でこの男が私を売った後にみんなを狙わないとは限らないのだ。
だとしたら、私がこの身を売ることに意味なんてあるのだろうか。

こんな時に自分が生きることを優先することに意味なんてあるのだろうか。

「っ！！何を！お前、今何をやっているかわかっているのか！」

『わかっていますよ。ここであなたを殺すことが1番正しい選択だから。』

愛する人たちを守る為ならこの身なんてどうなったっていい。

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