貴方と曇りと雨、 (ページ2)

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0. 2013 ページ2

続々と練習室で見かける顔が世に公開される中で
自分だけが世の中から断絶されているような気分だった。

元より会社から説明は受けていた。

SM Rookiesとしては公開しないこと。
自分をボーイズ、ガールズ、両方のレッスンに通うこと。
そして、最悪ボーイズグループとしてのデビューもあり得ること。

ありえない説明をされて驚いただけじゃない。
正直、会社がここまで自分に投資してくれることにも驚いていた。

韓国籍じゃない、自分の存在を買ってくれている。

才能だけは報われないこの世界で、またとない好機だ。
この特別待遇に乗っかるしかない。

けれど、どことなく異質な香りのする自分に、周囲の練習生も気づいていたようだ。
変なやっかみも仕方がない。だって周りからしたら、本当に"ずるい"から。

そのやっかみや、値踏みされる視線に滅入ってしまったこともある。
ぐたり、とトイレの個室で頭を抱える日々が続く中で、
頭にひびき続けたのは、綺麗な顔から発せられたとは思えないほど泥臭い言葉だった。

"利用できるものはなんでも利用したらいいよ、結局私たちが求められるのは結果なんだから"

大好きな、尊敬する人から言われたその言葉を噛み締めながら、窓のない練習室に篭る日々は続いた。
利用してやろう。途方に暮れるほど長いこれからの人生を賭けて飛び込んだ世界だ。

最後に笑うのはAだ。
だから腹を括って、少しくらい自分を見失ってもいい、Aになろう。

半地下の、妙に湿気っぽい空気の中で、ダンスを続ける。

息が上がって、ステップが途切れて、もう体力切れだ、とフロアに雪崩れ込む。
床が冷えていて、火照った体にどうも気持ちがいい。

集中していて気づかなかったけれど、ザアザアと雨の音が聞こえる。今日の予報はこんなに土砂降りだったっけ。

雨が降ってそれで、思い出した
初めて韓国に来た日も、こんなふうに土砂降りだった、気がする。空港で傘がなくて、それで…

ザアザアという音に混じってシューズと床が鳴る音が聞こえた。
と思えば無遠慮にガチャ、と大きな音を立てて開く扉。
この居場所を知り当てられる人は限られている。

「雨が降ってきたから、明希は相変わらず傘がないかと思って」

「ご名答、ジェヒョンも一緒に濡れて帰るでしょ？」

思い出したからといってなんてことはない。
傘の中に隠れて怯えていた明希は、もうどこかに押し込んでしまったから。