夏油くんの初恋の女の子の話【夏油傑】

初恋07 ページ7

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「…そっか、そっかあ…」





　校舎の屋上。






震える足は全く使い物にならなくて、私は座り込んだまま、動けなくなっていた。




目の前には、見たことも無いバケモノ。





大きな口をぐぱぁと開いて、今にも私を食べようとしている。私の手にあるスマホからは、焦る男の人の声。
　




『おい！ 返事しろ！！』
　




「さとるくん」
　





その声の主の名前を呼ぶ。君がそんなふうな声を出すなんて、友達1号としては嬉しい限りだ。
　




「さとるくん。さとるくんたちが、みてた世界は、これなんだね」
　




『っ…、待ってろ、すぐ助けに行ってやるから』
　




「そうだよね、知らない方が、幸せだよね、たしかに……。でも、でもね、わたし」
　






＿＿夏油くん、君の見ていた世界が見れて、嬉しい。
　





私にも、見れたよ。すごく、かなり、めちゃくちゃ怖いけど、君と同じ世界が見れてる。これって、すごいことなんじゃないかな。






だけど、ああ、せっかく同じ世界が見れたのに、私は死んでしまうなんて、なんて酷いんだろう。
　





頬を涙が伝う。
　





「ちゃんと、言っておけば良かったなあ」
　
　







世界が、暗転した。

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