必然か、それとも ページ5
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仕事ってこんなに疲れるのか……。
はじめての社会人、ミスを連発し、上司に怒鳴られへろへろになって帰れば、中から温かい空気とご飯の匂い。
「おう、お帰り」
「へぁ……」
ひょこっと台所から顔をのぞかせたパパ黒は、優しく笑いかけてくれた。
その優しさがとても身に染みて、慣れない世界と慣れない環境で、ぐちゃぐちゃになりかけていた私は、玄関で子供みたいに泣いてしまった。
パパ黒は少しだけ目を見開いた後、玄関にへたり込んだ私と、目線を合わせるようにしゃがむ。
「おいおい、どうなってんだよ」
「もうやだぁあ、ひぐっ、わたし、わたしわるくないもんっ、うぇえ」
「あー、あー、泣くな泣くな。ブッサイクになんぞ」
「ひどいぃ〜」
「悪い、悪い。……しんどかったな」
パパ黒はえぐえぐ泣く私の頭をよしよしと撫でる。
この人、こんなに優しいの?女の子だから??
「しん、しんどかった、」
「しんどいのに、よく頑張ったな。偉いぞ。だーぁいじょうぶだって。お前の頑張りは、誰かが見てっから」
「ほんと?」
「嘘なんか吐くかよ。ほら、笑え」
パパ黒は私の両頬をうにーと引っ張り不敵に笑う。
ずるい。かっこいい。ずるい。
だけどすごく嬉しくて、
「へへ、ありがとーございます」
私は思わずふにゃりと笑った。
「っ…」
「とーじさん…?」
「あー…くそ、調子狂う……。とりあえず風呂入れ」
「ひょわっ!?」
パパ黒は大きなため息を吐いて頭をガシガシとかくと、座り込んでいた私を軽々とその逞しい腕で抱き上げた。
これは俗に言うお姫様抱っこ………。
「色気のねー声」
「悪かったですね…! っていうか、下ろしてっ……!」
「ばぁか、降ろすかよ。落ちんぞ」
「……!」
パパ黒はそう言って、腕に力を入れた。
必然的に、さらに密着する。
待って、待って待って待って。
心臓、持たないんですけど。
「……………心臓に悪いです…」
ああ、この人に恋しないなんて、無理な話だ。
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寧々 - すっっっっごく面白いです!!応援してます!更新楽しみにしてますね! (2021年3月27日 20時) (レス) id: 0428dcaa70 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - すごく面白いです!!続きが気になります!twitterの方も前から見てました!応援してます (2021年1月9日 14時) (レス) id: 9f4a8dbb0c (このIDを非表示/違反報告)
ポン酢 - めっちゃ面白いです!Twitterの方も見ました!更新頑張ってください! (2020年12月23日 19時) (レス) id: 28f9afe8b8 (このIDを非表示/違反報告)
うわあああああああああああ - めっちゃ面白いです!応援してます!頑張ってください! (2020年12月23日 16時) (レス) id: 4fbbe91aff (このIDを非表示/違反報告)
もも - 最高です。 (2020年12月23日 16時) (レス) id: 7623a242cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨ノ | 作者ホームページ:
作成日時:2020年12月22日 22時