ヒモのオムライス ページ4
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起きてから、とりあえずこの身体について知ろうと家のあちこちを探った。
それを見ていた伏黒パパは、「空き巣みてぇだな」と笑っていたけども。
家捜しのおかげで、個人情報や通帳などが見つかった。
私の名前は崇徳A。すとく、と読むらしい。
伏黒じゃないんだ、と思ったけれど、そういえば津美紀ちゃんも伏黒だったのだから、婿養子になったのは再婚相手__なのだろう。
んんー? でももし私が結末を変えて、幸せ家族になったとしたら、伏黒恵は伏黒恵でなくなるのでは……?それってアリ?いやでもアリなのか………?
何となくモヤモヤするが、今は気にしても仕方がない。
それから、お金の心配もないようだった。小さなアパートだけど、コツコツ貯める人だったらしい。
結構ある。良かった。
だってこれからパパ黒養わなきゃなんだもん。
あ、そうだ。仕事。仕事もあるんだ。
あーーーーやること多すぎーーー!!と私が頭を抱えていると、どこからか大きな腹の音が聞こえた。
どこからか、というか、私のお腹から。
一瞬の沈黙の後に、吹き出して笑うパパ黒。
「わ、笑わないでくださいよ……!」
「悪ぃ悪ぃ。お前、ほんと見てて飽きねぇな。あん時も、野郎相手に啖呵切ってたしよォ」
「う……昔から肝だけは据わってるって言われますけど」
だろうな、とパパ黒はニヤリと笑う。
くっ、顔がいい。
「腹減ってんだろ。飯は作れんのかよ」
「えっと………」
多分、作れない。何せ私はつい最近まで実家暮らしの大学院生だったのだから。
料理も家事もやったことはない。
「作れない、です」
「ん、りょーかい」
パパ黒はそう言って、台所に立つ。
そして「お、器具は揃ってんな」と台所を漁りながら言った。
手際よく材料や器具を準備したパパ黒は軽快に野菜を切っていく。
ちょっと理解が追いつかないや
「え、あの、何を……?」
「何って、見りゃわかんだろ」
「いや、そうですけど」
「ヒモはヒモでもプロのヒモなんでな、家事くらいはしてやる」
お前、自分で言ったな、ヒモだって。
「だからお前は外で馬車馬のように働け」
ヒモの作ったオムライスは、おふくろの味より美味しかったです。
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寧々 - すっっっっごく面白いです!!応援してます!更新楽しみにしてますね! (2021年3月27日 20時) (レス) id: 0428dcaa70 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - すごく面白いです!!続きが気になります!twitterの方も前から見てました!応援してます (2021年1月9日 14時) (レス) id: 9f4a8dbb0c (このIDを非表示/違反報告)
ポン酢 - めっちゃ面白いです!Twitterの方も見ました!更新頑張ってください! (2020年12月23日 19時) (レス) id: 28f9afe8b8 (このIDを非表示/違反報告)
うわあああああああああああ - めっちゃ面白いです!応援してます!頑張ってください! (2020年12月23日 16時) (レス) id: 4fbbe91aff (このIDを非表示/違反報告)
もも - 最高です。 (2020年12月23日 16時) (レス) id: 7623a242cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨ノ | 作者ホームページ:
作成日時:2020年12月22日 22時