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【女】は妖刀であった。



どんな力にも屈さぬ、強靭な意志を持って、人の心を支配してきた戦士。

人の子に代わる代わる入り込み、その命で生き続ける、美しき夜叉。

刀身は紅く、白く輝き、決して本当の姿を視せることはない。










そんな【女】が唯一無二、心からの忠誠を誓った者。





それはたった一人の優しい娘。

人の子にして『視る』力を持つ娘。

意図せずして強大な力を供につけた娘。





愛する人を故郷に残し、一人遠く旅立つその娘に、【女】は自らを重ねた。


嘗て娘と同じ様に旅立ち、愛しい人を亡くした、人だった頃の自分。

復讐に囚われ、全てを失った昔の自分。



【女】は誓った。

愛しい彼の人への、せめてもの償いとして。

娘に、己と同じ道を進ませまいとして。





『生き長らえたこの命、総てお前に捧げよう』





娘が窮地に陥るとき、【女】はその姿を現す。


妖艶な桜色の着物に身を包み、美しい鶯色の長髪を靡かせ、空色の瞳を爛々と輝かせながら、【女】は呟く。












『我が主を傷つける者は、何人たりとも許さぬ』










.執筆状態：完結