午前零時の泉で花束を。 (ページ6)

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トウシューズを脱がせてページ6

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『いつの間にか泉が国民的アイドルか』

「調子乗んなくていいから
＿＿＿＿俺は高校卒業しただけでしょ？」

同じバレエ教室だった瀬名泉。
彼はアイドルのKnightsのメンバーで、今人気急上昇中なのだ。在校中でもトップで人気だったのは知っていたので人気の理由も分かるけれど。

それと同時に彼はこのバレエ教室から去ることになった。今、そんな彼と2人でこのレッスン場の床に座り込んでどちらともなく柔軟を始める。

最後に１回踊ろうか、彼が昨日の夜中に送ってきたメッセージを果たすべく私たちは先生から借りたコンクール用の衣装を身につける。トウシューズのリボンは、やけに気合が入っていつもに増して丁寧な自信がある、それくらい私は彼と舞うことが＿＿＿＿彼のことが好きなのだ。

「会ってない間に太ったんじゃない」

皮肉ばかりぶつけてくる彼に腹が立つこともあるが、私は重症だ。そんな泉も好き。幼い頃から一緒だったから慣れただけなのかもしれないけれど。

『はいはいカセット流すよ』

カセットテープに録音された私たちの最後のグランパは眠れる森の美女のオーロラ姫だ。顔も良ければ踊りも高度な泉。曲が鳴った瞬間、彼の表情は王子様になる。

どんどん離れて言ってしまうから

離したくない、ずっと幼馴染でいたいし

片想いでいいからそばにいたかった。

お誕生日おめでとう、なんて最後は言うつもりだったのに踊りの後は泣いて、私は何も言えないだろうな。なんて、私。

今すぐトウシューズを脱いで

君に抱きついて頭を撫でられたい

みんなの瀬名泉になってしまう前に。

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曲が終わって余韻が響く中で彼は言う。

「ね、A。俺は本気でアイドルをやるから、こういうことを言うのはこれで最後だけど」

「俺、あんたのこと好きだよ」

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