彼は何も言わない

言わない10 ページ10

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「俺の財布ねぇんだけど……」




ある日、クラスの人気者の財布が無くなった




誰かがとったんじゃないか？と周りに疑いをかけるやつもいれば




その人気者を取り囲んで大丈夫？と励ます奴もいた




さすがの俺も周りの空気を読んでとりあえず席を立ってそれっぽい奴の様な振る舞いをしていた




……でも




そんな中あいつだけが、何食わぬ顔で席に座り読書をしていた




それに目ぇつけたんだろうなぁ。




「………おい。おいてめぇ。」




クラスの人気者が、あいつの席の前に立った




あいつは本をおいて、人気者を見上げた




「………立てよ。」




命令され、あいつはすぐに席を立った




その直後だった




______ガッ




無機質な音が、クラスに響いた




あいつが人気者に頬を殴られ、その衝撃で倒れこんだ




俺はそれに驚いて、思わずクラスの連中を見渡した




……全員顔が怖かった




「……１つ聞く




…お前がやったんじゃないのか？」




人気者はあいつの胸ぐらを掴み、問いかけた




…やべぇ。やべぇってこれ。




「そーだそーだ！！なんとか言えよ！！！お前が財布とったんじゃねぇの！？」




「人のもの盗るなんて最低よ！！！」




ほら、クラスの奴らもヒートアップしてきた





「…………」




何か言わねぇと




「……何も言わないってことは




やったってことでいいんだな？」




……何か言えよ、何してんの




「…




…あーもう時間切れ。お前さ、財布出す前に土下座しろよ。」




人気者はあいつに信じられない言葉を投げかけた




「そんでさ、謝罪しろ。




俺が財布をとりました、すみませんでしたって言え。」




…そんな、めちゃくちゃな人気者の命令




「…………」




______ガタッ




…あいつは




何も言わずに、人気者の手を払ってその場に正座した




………




…なんで





何も、言わないの？






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