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ピンポーン。
錫来の家は、閑静な住宅街の中の一軒家だった。
ヒグラシの鳴き声がする。
それと足元からは、鈴虫のような虫の鳴き声。
ムウ、とした熱気の生温い風が、背中に張り付いたシャツを撫でていく。
「いないね」
山本が俺を振り返った。
家の方を見ても、なんの気配もない。
門扉は開いていたからアプローチを通ってドアノブを動かそうとしてみたけど動かなくて、なんだか少しホッとした。
テレビドラマなんかでは玄関の鍵が開いてて、中に入ると血だまりが……というパターンが多いせいで嫌な想像が止まらなかったけど、ほんとに留守のようだ。
「みなちゃんの自転車はある」
「……」
「車はない……」
「……出かけてるのかな」
山本が、家の2階の一つの部屋を見上げた。
「みなちゃーん」
「……」
一緒に部屋を見上げてみた。
錫来の部屋はあそこなのか。
「いないのかな……」
山本はもう一度インターホンを鳴らした。
しばらく待ったけど、部屋は静まり返ったままだ。
「みなちゃんのママ仕事行ってるかな」
「ん？」
「みなちゃんのママね、隣駅のショッピングモールの中の洋服屋さんで働いてるの、ちょっと見てくるね」
山本が俺を見上げて、じゃあ、って感じで行こうとした。
「俺も行く」
「ついてきてくれるの」
「だって気になるし……」
「ありがとう！」
二人並んでまた歩き出す。
山本は落ち込みそうになる気持ちを奮い立たせるようにカラ元気だ。
「なんかデートみたいね！松本くんの彼女に怒られちゃう」
「そんなのいねーよ」
「モテるのに？」
「は？モテねーよ」
「え！モテてるよ！きょうちゃんでしょ、りなちゃんでしょ、しおりちゃんでしょ、それからいっちゃんと、塩谷さんと、岩本さんと、一年だと、宮下さんと、小山さんと」
「いやいや、何それ初耳」
山本が俺を見上げてくすくす笑ってる。
「彼女いないのかぁ」
「いません」
「好きな子は？」
「うーん、いい子だなとは思う子はいてもなかなか恋愛感情抱くほど特別にはならねーな、山本は？彼氏いんの？」
「彼氏なんてできたこともないよ！」
なんか拗ねた。可愛いなコイツ。
「モテるのに？」
「うそだ！モテないよ！」
「モテてるよ、加山先生だろ、達川、松田とー、あとは」
「女ばっかじゃん！」
山本の泣く姿を見ないで済むように、なるべくその時が来るのを先延ばしにするかのように。
軽口を言い合って、見たくない現実から目を背けた。
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かき - このシリーズ大好きで何度も読み返してます！更新応援しています！ (10月28日 21時) (
レス) id: 1a835ab69b (このIDを非表示/違反報告)
みい(プロフ) - 一気読みしてしまいました！よしのさんの小説は本当に読みやすくて感情移入しやすいです！更新楽しみにしています！ (2023年3月4日 18時) (レス) @page37 id: 35d5ff39db (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - 遅くなりましたが読みにきました♪あ〜面白い〜よしのさんの描写が分かりやすくて頭の中で勝手にドラマ化されています＼_(･ω･`)ｺﾚ大事！続きをのんびり待ってます٩( 'ω' )و (2023年2月26日 13時) (レス) @page37 id: b010e36986 (このIDを非表示/違反報告)
コズ(プロフ) - 翔さん＆よしのさんおめでとうございます！この佳き日に二作同時に読めるなんてこちらこそプレゼントありがとうございます！翔さんとヒロインちゃんがどんなこと話してたのか知りたい！雅紀君にはどんな色が見えたのかな？桃色桜色？パチパチ弾けたソーダ水な？キュン (2023年1月25日 15時) (レス) @page37 id: 8b85446469 (このIDを非表示/違反報告)
りん - 櫻井さんとヒロインの色恋もみたいかもーなんちゃって笑笑よろしくお願いします❕ (2023年1月22日 7時) (レス) @page32 id: 616dc38d65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2022年8月31日 7時
