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その日の夜、元気な人だけ宴会して、結局私達は、観光すらできずに京都をあとにした。
私可哀想。
怪我だけして帰るなんて。
トボトボと新幹線に乗る。
一応おみやげに八ツ橋を買ったけどキオスクでなんて風情もへったくれもなんもない。
Aちゃん、窓際に行きなよって相葉さんが言ってくれたから、窓の外を見てしょんぼりしてたら相葉さんがフフフと笑う。
「今度観光に来たらいいじゃん、彼氏と」
「相葉さんまで嫌味言うのー」
「素直になればいいのに」
相葉さんが意味深にそう言った。
「どういう意味……」
「河東の翔ちゃんを見るときのピンク色、紫っぽいピンクだったんだよね、Aの色とは似てないよ」
「……紫？」
「うん。下心っていうか……セクシーって意味ね？触りたいけど無理、みたいな……」
「へぇ」
「もっとゲスい意味のえろいのは透明感のないねっとりとしたピンクなの」
「面白いね、その目借りたい！」
「貸してあげたいな、そしたら見えるのにね」
「何を？」
「自分から出てるピンク色。透明感があってキラキラ。綺麗」
「……え？」
「ふふ」
相葉さんがとっても優しい目で私を見た。
「えっと……」
「河東と同調なんてしてないよ、その色はもっと前から俺見えてるもん」
「……」
「でも……今はちょっと暗い色になっちゃったかなぁ……あんなに強く否定されるとね？」
相葉さんが私の頭をふわふわ撫でた。
「……私相葉さんのことも大好きだよ」
「うん、知ってるよ。俺、見えるもん」
「……」
「俺から言えることは。もしAを裏切ったら俺を殺してもいいよ、っての。あれ翔ちゃんの本心だよ」
「……」
「……相手が俺でも同じこと言うだろうけどね。愛されてるよねぇ俺ら」
わけもなく、泣きたくなった。
「胸貸そうか？」
「いいの？」
「あれ？ほんとに貸してほしい人は俺じゃないみたいだからやめとこっと」
相葉さんがいたずらっぽく笑った。
「そのピンクは京都においてく……」
「もったいない」
「……」
「そのピンク綺麗なのに。翔ちゃんの色も綺麗なんだよ、見せてあげたい」
その時頭上から噂の主の、おまたせ！という声がした。
「はいお弁当！相葉くん唐揚げね！Aはどれがいい？サバの塩焼きと手まり寿司……」
お母さんみたい。
「誰がお母さんだコラ」
「読んだの？」
相葉さんが、私を見て馬鹿だねって笑う。
私の心を残して。
すごいスピードで京都の景色が後ろに遠ざかって行った。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年3月5日 16時
