３ ページ39
相葉さんが私の目の前にロールケーキを置いてくれた。
櫻井さんはひとりで納得して話しながら紙コップにコーヒーを注いで回ってる。忙しい人だ。やっぱりお母さんだな。
「あのさ、Aはテレパスじゃなくて、エンパスなんだよね」
皆が首を傾げる。
「人の感情の受信機。俺は人の思考を受信してるんだけど、Aは感情ごと受信してる」
「……うん」
二宮さんが返事した。
「例えば、大野さんが、ニノのことが好き！って思ったとするじゃん？」
大野さんがイヤン、って顔を覆った。何その可愛い仕草。くらくら。
私も好きですよ、って二宮さんが大野さんに言ってイチャイチャしてる。なんだこれ。
「あー……なんか食ってる……俺もちょうだい……」
松本さんがフラフラ起きてきて、私の横にストンと座った。
いい匂いするし気怠そうな横顔がやたらセクシーで困る。
はいどうぞー、って相葉さんが言って、櫻井さんが大丈夫か？って心配してる。
話が空中分解しそうになって、二宮さんが、「で？」と言った。
「うん、俺は『ニノのことが好き』って声が聞こえるの、だからどういう意味で好きだと言ってるのか理解できない」
「うん」
「けどAは違うんだろ？」
櫻井さんが私に聞いてきた。
「うん、先に、ふわっと好きだなぁって感情が伝わってきてから『好き』って聞こえてる、その好きは、場を明るく盛り上げてくれて嬉しいとか、そういうのも伝わってる」
「へぇ……」
二宮さんが不思議そうに頷いた。
「だからAのエンパスは、相葉さんのと近いんだよね、霊が見える理由もそれだと思う。感情を見てる、というか」
「……うん」
「だからAは誰かに同調する形でしか声が聞こえないんだよ。俺は違う。同調しなくても聞こえる、俺は他人の感情に干渉しない」
「……つまり？」
「A、河東に同調したんだろ」
櫻井さんが私を見てきっぱりそう言った。
「……」
「河東と話してただろ？松本くん素敵だな、櫻井くんすごいかっこいい、めちゃくちゃ好み！好きなタイプ！とか、聞いたんだろ」
「聞いた」
「虫は河東の一部を喰って入り込んでた、Aの中に虫が入った理由も多分それだろ、河東の心に同調したときに虫も一緒に取り込んだ」
櫻井さんが何度も頷く。
「だって今。虫が完全にいなくなったAの心は、俺のこと見ても、世話好きのお母さんかよって思ってる声しか聞こえない」
わお。
聞かれてたのか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6026人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年3月5日 16時
