鎌の男と虫(03/30) ページ22
「そうだ、それどころじゃない！」
バッと顔を上げたら相葉さんの鼻すれすれに頭を上げたみたいで相葉さんが、あっぶねー！って言ってるのを無視してみんなを見上げた。
「屋上に人がいた！」
「え？」
「上からそのコンクリートのブロック落とされて！」
私が外で粉々になってるブロックを指差したらみんなが絶句した。
「肩に当たった？」
相葉さんが聞く。
「当たったのは棒」
「棒？」
「あれに当たってたら死ぬよな……？」
櫻井さんが笑おうとして失敗した。
「あと、二階の非常口からは出ない方がいいって言ってた」
「え？誰が？」
二宮さんがキョトンとして聞く。
「マサトシくん」
「霊に聞いたの？」
二宮さんが呆れたように言った。
「Aいつの間に霊媒できるようになってんの？」
松本さんが大きな目を見開いてる。
「知らないよ、私もわかんないよ、けど一緒に逃げてるときに聞いたの！」
「……確かに何か細工されてるみたいだった」
大野さんが言う。
「みんなでA探してたからー。まさか外から入ってくるとか思わねーし」
大野さんがふにゃふにゃ笑ってる。
一緒になってへにゃへにゃしそうになって、慌てて立ち上がる。
「屋上！行きましょう」
「まだいるかな」
「出口、ここしかないのに？」
みんなが確かに。ってつぶやいてる。
正面玄関は鉄板が噛まされて鎖でぐるぐる巻になってるし、二階の非常口は何か細工がされていて、出入りできそうなのは待合室の窓だけ。
今私たちは一階の非常口の前にいて階段をみあげてる状態だから、屋上にいた男はここに降りてくるしか出入りできない。
つまり。
階段から私達が上がっていけば、屋上の男は屋上か二階のどこかに隠れてやり過ごすか、飛び降りるしかここから出られない。
数でも陣取った場所からみても。
私達のほうが圧倒的有利だ。
相手が人間なら追い詰められる。
私達は周りを確認しながら、注意深く階段を上がる。
「二階に潜んでないか、見てくる。皆は誰も降りてこないか見張ってて」
大野さんがスタスタと歩いていって、相葉さんが危ないよー！って言いながら追いかけた。
10部屋ほどある病室の中には誰もいなかったらしい。
すぐに戻ってくる。
「じゃあ、屋上にまだいるってことね」
二宮さんが階段を見上げる。
「何か仕掛けあるかな？」
松本さんが懐中電灯で見渡してる。
「自分が昇降しないといけないのに何もできないでしょ」
櫻井さんがそう言った。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年3月5日 16時
