〇≠無の証明Ⅳ－４ (ページ3)

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「子供だし……病院で、って言うのはちょっと子供には刺激が強いから……そういう噂になったんじゃないですか？」
「そっか……」

櫻井さんが顎にふと手をやる。

「Aはどう思う？」
「何がですか？」
「この事件。幽霊騒ぎの裏に何か隠されてるような気がしねぇ？鎌男って何？」
「そうですね」
「あと虫だよな、本体は？」
「……私、気になることがあるんですけど」
「うん」
「河東の中に虫がいるのだとしたら、彼は誰に裏切られた、と思ってるんでしょうね？」
「……そうだな、奴が誰かを殺したいと思うほど憎んでたら危険だよな？」

櫻井さんが考え込むように宙を見た。

「うーん……そんな憎しみは感じなかった……」
「河東からなんか聞こえたの？」
「櫻井さんが素敵っていう感情がうるさくてあんまり聞こえない」
「……有難迷惑だな！」
「ただの迷惑ですよ、強い感情は自分の感情も引っ張られる感じがするから……」
「引っ張られるの？」

櫻井さんが私をちらっと見る。

「アンナのときとかそうだった」
「ああ、うん。A、ロイのこと思い出してるとき、めちゃくちゃ愛してんだろうなーって思ったよ、悲痛な叫び……」
「……」
「自分の命を引き換えにしてもあなたを守る、愛してるって……」
「うん」
「この命に代えてでもあなたを守る、かぁ」

櫻井さんが今にも降り出しそうな空を見た。
目がキラキラしてる。

「……？」
「その逆もあるか」
「というと？」
「お前を殺して俺も死ぬっていうの」
「……うん。紙一重だよね」

隣を歩く櫻井さんの指先が目に入る。
短い爪。長い指。

「……紙一重？」
「私を愛してくれないならいっそのことあなたを殺しててでも私のものにするわ、と」
「……サロメ？」

櫻井さんが、苦笑した。

「私を愛してくれなくていい、あなたは幸せになって欲しい。でもあなたのいない世界に生きる意味がない、私の命はもういらない」
「……」
「愛してくれないという答えは変わらないからどちらかが殺される……残酷な二者択一」
「……うん」
「相葉さんが言ってたなぁ、ピンクが一番いろんな色があるって……最初はみんなキレイな色なのに悲しい」

櫻井さんが私の頭をぽん、と叩く。

「Aって意外とロマンチストなんだな、ごめん、知らなかった」
「うるさいなぁ！好きな人の心の声が聞こえてしんどいから誰も好きにならないようにしてるだけなの！」
「同じく！」

櫻井さんがあはは！って笑った。