甘く見られた女 ページ32
まずいな、部長いないのか。
私一人でできるのかしら。
頭の中で段取りを考えながら企画部に入る。
「ちょっと待っててね」
走って先に中にはいる。
パスケースを探すふりして、ネームホルダーにラボに入るパスワードを記入した。
「あれー？ないなぁ。ロッカーかなぁ？まさか落とした？」
急いで隣の席の椅子の下にパスケースを落としてロッカーの方に向かう。
「手伝おうか？」
「ごめんね、黒いパスケースなの」
私のデスクの引き出しを見て、石田くんは手が止まった。
私のネームホルダーを見つけたんだ。
「ちょっとトイレとか見てきていい？」
「うん」
さあ、どう出る？
トイレに行ったふりしてオフィスにそおっと戻って様子をうかがう。
石田くんはネームホルダーから紙を取り出して、スマホにその写真を撮った。
パスワードを盗んだのね。
そのまま何事もなく私のネームホルダーをそっと片付けて、ガタガタと机の下を探してる。
「あ、あるじゃん」
よし。
「あーんどうしよう、トイレにもなかった！朝、駅で落としたかなぁ？」
「あったよ！」
「え、ほんと？よかったぁ！」
石田くんが微笑んで私の頭の上にパスケースを乗せた。
「助かりました」
「いいよいいよ、帰ろうか」
企画部の電気を消した。
「ラボも誰もいないからなんか怖い感じ……」
「そうだね……」
「お化けとか出そう……」
「暗いとこ、怖い？」
「暗いの怖いよ、石田くんいてくれて助かったよー」
石田くんに甘える私マジで気持ち悪い。
「ねぇ、麻倉さん？」
「ん？」
「今度……デートしようよ」
「デート？」
「うん。どこでもいいよ、映画とか」
「映画すき。暗いけど」
「あはは」
二人で会社を出て、少し歩いたら石田くんが、あ！と声を上げる。
「びっくりした！」
「俺、友達と約束してるの忘れてた！」
「え？今から？」
「麻倉さんとご飯終わったあとくらいに待ち合わせしてたんだった！」
「そうなの？どこで？」
「公園のタバコ吸えるところで待ち合わせしてて……」
嘘だな。
ああ、嫌だな。
石田くん。私のこと甘く見すぎだよ。
ちょっと、悲しい。
「そうなの？行ってね！私、大丈夫だから！」
「ごめん！じゃあ！」
石田くんが公園の方に走っていく。
あーあ。
友達になれる可能性もあったのにね。
石田くんが来る前に急いで会社に戻る。
先回りして待ち伏せしよう。
エレベーターに乗り込んで、暗視カメラアプリのシャッター音を無音にかえた。
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いろは(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます！！TwitterのフォローをさせてもらったのですがDMが送れずこちらから送らせてもらいます。SUZUIROというアカウント名です！ (10月5日 20時) (
レス) @page47 id: 7b03d9df09 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり(プロフ) - 完結、おめでとうございます！よしのさんのお話はいつも楽しく読ませていただいています！ (2020年3月25日 20時) (レス) id: 29ae961861 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - よしのさん、こんにちは！とにかく、とにかーく面白かった！一気読みしました！久しぶりに朝方まで（徹夜に近い）読んでいました。もう本当に読むのが楽しいってこういうことなんだって思いました！ (2020年3月10日 11時) (レス) id: 6cd0f843d6 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - おもしろかったー！一気に読みました！読後感がスカッと爽やか(^O^) ありがとうございました！ (2020年3月1日 9時) (レス) id: f390aacf74 (このIDを非表示/違反報告)
mikoto020707(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしてました。終わってとても寂しいです。両思いになってからも櫻井さんが振り回される続きが読みたいです。よろしくお願いします。 (2020年2月27日 9時) (レス) id: 285ed8c737 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年2月11日 8時
