王子の傍に ページ24
やっと仕事が終わって、開発企画部に戻ったら今日はノー残業デーで誰もいないことに気づく。
ラボの中の人たちはそんなの関係ないから気づかなかった。
石田くんももう帰ってる。
私が帰る用意をしていたら、櫻井さんがひょこっと顔を覗かせた。
目がくりくりしてる。リスみたい。
「あ、まだいたの」
「うん、今終わったよ」
私絶対顔緩んでる。
会えて嬉しいって顔してる。
「部長は？」
「もう来ると思うけど」
「そっか」
「……うん」
「……」
薄暗いオフィスの中に、櫻井さんとふたりきり。
「櫻井さん」
「ん？」
「次は、誰と一緒に出勤してるの？」
「……一人だよ」
「私、櫻井さんは？って聞かれちゃったよ」
「なんて答えた？」
「喧嘩してるって答えた。もう多分修復不可能だって言った」
「あはは」
櫻井さんが私から少し離れたデスクの上に腰掛けた。
「その席中西さんだよ」
「そうなんだ、中西って帰るとき全部仕舞うタイプなんだな」
「うん」
「Aのデスクも何もない」
「うん、そうだよ。急に辞めてもいいように基本何も残さない」
「……」
櫻井さんがうなだれる。
「ねぇA？」
「ん？」
「今は、どっちのA？」
「……今更櫻井さんしかいない場所ではもう飾れないよー。部長が来たら切り替える」
「見分けつかないな、オンオフの切り替えスイッチつけといてよ」
「えーどこに」
「俺にだけわかる場所、どこかなぁ」
櫻井さんがちょっと苦笑しながらそう言った。
「櫻井さん」
「んー？」
カバンを持って櫻井さんに近づく。
櫻井さんは私をじっと見てる。
「どした？」
「最後に櫻井さんの力になりたい」
「……」
「ねぇ？」
「……ん？」
かすれた声。
小さく首を傾げる。
優しい瞳。
微笑みを湛える唇。
「このままだと私、心残りになる……せめて、犯人見つかるまでは偽装でいいから櫻井さんの傍にいてもいい？」
「……」
ガタン。
櫻井さんがデスクから音を立てて降りて私を見下ろした。
「櫻井さん？」
驚いて一瞬後ずさろうとした私の腕をぎゅうっと掴んだ。
「あのさ」
「……え」
「あのさ、俺……」
「お待たせしました、櫻井さん！っあ！ごめんなさい！お邪魔しました！」
斉藤さんがすごい勢いで走ってきてすごい勢いで回れ右した。
「え！あは！」
「ちょっとちょっと部長！待って！」
「すみませぇん！わー」
「まって！」
櫻井さんが追いかけてる。
なんだか可愛い二人につい笑いが溢れる。
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いろは(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます！！TwitterのフォローをさせてもらったのですがDMが送れずこちらから送らせてもらいます。SUZUIROというアカウント名です！ (10月5日 20時) (
レス) @page47 id: 7b03d9df09 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり(プロフ) - 完結、おめでとうございます！よしのさんのお話はいつも楽しく読ませていただいています！ (2020年3月25日 20時) (レス) id: 29ae961861 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - よしのさん、こんにちは！とにかく、とにかーく面白かった！一気読みしました！久しぶりに朝方まで（徹夜に近い）読んでいました。もう本当に読むのが楽しいってこういうことなんだって思いました！ (2020年3月10日 11時) (レス) id: 6cd0f843d6 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - おもしろかったー！一気に読みました！読後感がスカッと爽やか(^O^) ありがとうございました！ (2020年3月1日 9時) (レス) id: f390aacf74 (このIDを非表示/違反報告)
mikoto020707(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしてました。終わってとても寂しいです。両思いになってからも櫻井さんが振り回される続きが読みたいです。よろしくお願いします。 (2020年2月27日 9時) (レス) id: 285ed8c737 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年2月11日 8時
