可愛いだけの女 ページ26
夕方。
もうすぐ終業時間って時に、おそらく部長から色んな人を経由して、部署の先輩が私の席の隣の新入社員の女の子の横に来た。
「浜野さん、悪いけど私今手が離せないから、資料室からこれとこのファイル持ってきてくれない？」
隣の席の浜野さんはハイ、と返事してから『んもう、電話待ちなのに』と小さく愚痴った。
「私行きましょうか？」
「え、いいの？」
浜野さんの目が輝く。
「勿論。今一段落ついたので行ってきます。えっと、資料室の鍵は……」
「総務にあるの、お願いします」
浜野さんが私に手を合わせて拝む。
「やめてくださいー」
「麻倉さんってホントいい人ですよね」
「えー腹黒なのに！」
「そんなことない、櫻井さんが気に入るのもわかる……」
ああ、浜野さん。櫻井さんのファンだもんね。
本音を言うと、総務は今はちょっと行きたくなかった。
けど引き受けたからには行かなきゃ。
立ち上がって2階を目指す。
櫻井さん居るかな。
居ませんように。
……ふと我にかえる。
なんでこんな気まずい思いをしなきゃいけないんだ。
堂々としとけよ私。
総務に入って、役所のカウンターみたいになってる受付で、すみません、と声をかけた。
「……」
おっと。
誰も気づいてくれない。
櫻井さんってすぐ気づいてくれたよね。
テテテって走ってきて、どうしました？って。
視野が広いっていうのは仕事できる人の特徴だよね。
「あの。すみません」
「あー、はいはい」
ちょっとめんどくさそうにお姉さんが来た。
「お忙しいところすみません。資料室の鍵をお借りしたいのですが」
「資料室……？あれ？鍵が無い」
「資料室の鍵なら櫻井さんが持って行ったよ」
奥の方からおじさんがそう言った。
暇そう。夕刊読んでる。
なんでそんな偉そうに座ってんだ。
あ、そっか。今櫻井さんがいないからか。
チクってやろうか。
「だってさ」
お姉さんが私を見て、そう言った。
だってさ？何この態度。横着め。
さてと。櫻井さんが戻ってくるまで待つべきか。
……部長、急ぎっぽかったしなあ、仕方ない。向かおう。
「失礼しました」
総務を出たらひそひそ声が聞こえる。
ほらあの子だよ、櫻井くんが今お気に入りの子。
どこがいいんだ、ちょっと可愛いだけだよね。
という声が聞こえてきた。
……ハ？可愛いだけだって？
可愛げだけが全くないといわれた私が可愛いだけだって！
そんなこと言われる日がくるなんて、ゆるふわハードボイルドすごい。
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susakinyanko(プロフ) - 駅前のハトがツボ過ぎます。死ぬかと思った笑 (12月15日 15時) (
レス) @page41 id: 9ec95cf02d (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 面白い！眠気がとんだよー！よしのさん好き(^^) (2020年1月30日 10時) (レス) id: 12e1cc5b48 (このIDを非表示/違反報告)
花乃(プロフ) - こんにちは。やっぱりよしのさんのお話好きだー！！と叫ばせていただきます(*´∇｀*) (2020年1月26日 17時) (レス) id: 95a7b7882e (このIDを非表示/違反報告)
ちこ(プロフ) - こんにちは。よしのさんの新作ですね。ゴルゴの回まで一気読みしてしまいました。とっても楽しいです！更新楽しみにしています。 (2020年1月16日 16時) (レス) id: c3adc4cd0a (このIDを非表示/違反報告)
ジュン(プロフ) - もう、さすがの一言です。やっぱり面白すぎます！最高です！ (2020年1月16日 1時) (レス) id: 586c2240fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年1月6日 0時
