〇≠無の証明Ⅳ－１ (ページ7)

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京都の人(08/13) ページ7

「……はい！」

一番近くにいた相葉さんがドアを開けた。
花子さんはいまお使い中でお留守。

「失礼します」
不安そうに入ってきた人は、まだ若い青年だった。大きな目をくりくりさせて、ちょっと緊張した面持ちで中にはいる。
ふと見れば、手首にギプスのようなものが見えた。

「私、京都から来ました中間と申します」

公安の？
みんながそう思ったけど口に出さない。

「今日はお忙しいところすみません」
「いえ……手、お怪我されてるんですね」
松本さんがそう言った。

「ああ、そうなんです、ちょっと上から落ちてきた木材を避けるとき失敗しまして」

上から落ちてきた木材。
皆が言葉をなくした。

「で、今日は……」
「はい、こういう特殊な事件を扱えるのうちとこちらだけですし、もう最後の手段やと思って参りました」

心地いい柔らかい関西のイントネーション。

「どうぞおかけになってください」
「失礼します」

私が冷たいお茶を目の前に置いたら、ニコ、と微笑んで、ありがとうございます、と会釈してくれた。
とっつきにくい高圧的な公安が来たらどうしようかと思ってたけどいい人そう。

「いきなり質問すみません、中間さんは霊現象などは信じていらっしゃいますか？」
櫻井さんが中間さんの目を真っ直ぐ見て聞いた。

「今まで見てきた事件の八割くらいは、まぁ常識の範囲内で説明ができるものですが、あとの二割は何とも言えないといいますか」
「はい」
「科学では説明できない現象が起こっていたとしても実際悪さするのは霊やなくて人間の方やったりして……歯切れ悪くて申し訳ない答えしか用意できません」

「失礼ですが、中間さんの課では、……見える人は居るのですか？」
松本さんが必死な面持ちで聞く。

「ハッキリと見えるわけではなさそうです、感じる、といいますか」
「そうですか……」
松本さんがちょっとがっかりした。

「祓える人は？」
二宮さんが聞く。

「あの、霊現象かどうか捜査して、いよいよこれは説明がつかないってなったときには、お寺さんとか神社でお祓いしてもらったりして」

「じゃあ、誰も特殊な力持ってたりしないの？予知とか心が読めたりとかオーラが見えたりとか」
相葉さんが不思議そうに聞いた。

「そんな力持ってる人なんてこの世にいるんですか？」
「でも貴方、ぼんやり未来見える人でしょ？」

櫻井さんがはっきりそういった。
私も思わず頷いた。