〇≠無の証明Ⅳ－１ (ページ5)

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……なにも見えないのだけど……！

「松本さんいまメガネかけてるのに見えるの？」
私の言葉にふふ、と笑う。

「裸眼だと周りはピント合わなくてぼやけるのに霊は普通に見えるからはっきり見えてる、って表現にしてる」
「……うん」
「矯正視力だと、周りははっきり見えて霊は逆にピントが合わなくなる感じ、老若男女の見分けつかないし動物は小さくて見えない」
「……」
「この写真は軍服着てるってわかるから男だし、これは映り込んでやろう、って感じじゃなくてうっかり映ったんだな、通りがかり？」
「通りがかりのうっかり者」
「そう、うっかり撮られてやんの、多分向こうもびっくりしてるぞ、やべーって」

怖い写真もこの課にいたらなんというかバカバカしくなってくる不思議。

「心霊写真ってあるの……？」
「あのさ、A、これ何に見える？」

松本さんが紙にぽんぽんぽん、と丸を書く。

『∵』パソコンでは、なぜならば、の変換で出てくる証明の記号？

「記号？」
「これを例えば……」

松本さんがそのへんにあった新聞の女の人の肩辺りにうすーくその記号を描き入れた。
肩のシワとあわさって、人の顔のように見える。

「顔だね」
「うん」
「この世に恨みがありそう」
「でしょ？人間の脳は丸が2つ並んでいて、その下に丸があったら人の顔と認識するようにできてる、それをシミュラクラ現象と呼ぶ」
「へぇ……」
「オーブと呼ばれる光の粒とかも、ただのホコリや水蒸気の可能性が高いからプロのカメラマンは心霊写真撮れないんだよね」
「……」
「この写真だってこの男、俺しか見えてないでしょ？A見える？」
「なんにも見えない、ただの窓」
「そういうこと。これが心霊写真ってわかるのは見えるやつだけ。普段見えない奴がなんで写真だと見えるんだよ？おかしいでしょ」

いちいちごもっとも。
「あとね、霊は写真嫌いだと思うよ」
「そうなの？」
カシャ。
松本さんがいきなりスマホで私の写真を撮る。

「え！」
「どんな気分？」
「最悪！可愛く撮れてる？」
「ふふん」

松本さんがスマホをポッケに仕舞った。
「え？え？どんな顔？ねえ！」
「霊も一緒だよ、ハイチーズって言われてない写真撮られて、ヤメテーって思ってるよ」

「いちゃつくのはそこまでとして！」
櫻井さんが一緒に話を聞いてたのにいきなり大声を出して、ビクッ！と飛び上がった。

「いつから捜査？」
「明日」
係長がこともなげにそういった。