〇≠無の証明Ⅳ－１ (ページ33)

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「あ！逃がさないわよ！」

一応悪役みたいな台詞を言ってみた。

子どもたちがギャー！とか言いながら居なくなるのを見送ったあと、櫻井さんと目があった。

「怖いよ櫻井さん」

「まぁね。怖くなかったら意味ないからね」
「いじめ、無くなるといいね」
「……人食い鬼に殺られそうになった時、行くよ！って言えたあの子が英雄になって……もう二度と悲しい目に合わなきゃいいな」
「お前のお陰で助かったって声聞こえたし……大丈夫じゃないかな」

「大丈夫」
相葉さんが私達を見てニコニコ笑った。

「帰ってくとき、あの子達全員のグレーっぽい影なくなって虹色っぽい光でかたまってたから多分大丈夫だよ」
「それは何の色？」
「友情の色。体育祭のリレーを応援するときとか甲子園で最後チームが集まる瞬間の時とかと同じ色、ってわかるかなぁ」
「あー。なんとなくわかる」
「このままあの光が続きますように」
相葉さんが少し悲しそうに笑う。

「子供は大人と違ってまだ少しのきっかけで変われるから救われるよね」
「うん」
「しばらく俺らがお化け扱いされてここに来れなくなるといいな、ビワはもう終わったし」

悲しそうな櫻井さんの声に、そうだね、って呟くしかできない。
前もこういうことがあった。
櫻井さんは弱い者いじめを酷く憎んでいる傾向がある。

櫻井さんが私に、何か紐か針金持ってない？と聞いてきた。
「ガムテープしかない」
「それでいいや、ちょうだい」

櫻井さんがガムテープを金網の破れたところに貼り付けた。

「……一応、今晩、子供や野犬が入るのを防ぐくらいになればいいから」
「ん」
「大人には何の意味もないけど……つまりその確認のためにも貼っとこう」

少し手伝って立ち上がったら、相葉さんがさっきの子供とのやり取りをみんなに説明してくれてる。

「おつかれ。ホテル行こ」
大野さんがそう言った。

もう一度細い道を通って非常扉から病院の中に入る。中を通って正面から病院を出て、係長はまた鎖で門を施錠した。意味ないけど。

新館の病院に戻る。
エアコンがきいてて、5人全員が、はぁぁあ、と息を吐いた。

「暑かった……」
「うん……」

預かってもらっていたスーツケースを貰いに受付の事務に声をかけたら、事務局長の河東さんが出てきた。

「どうです？中、暑かったでしょう？」

松本さんを守らなきゃ！
素早く松本さんの前に仁王立ちする。

「え？守る？どういうこと？」
櫻井さんが私に聞く。