〇≠無の証明Ⅳ－１ (ページ29)

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「つまり……」
「鎌男は人間ってことね、幽霊じゃないって、サイッアク」

背後から二宮さんのめんどくさそうな声がした。

「……人が人を襲うの？なんでそんなこと……」
「まぁ、単純に考えて、なんらかの事情があってここを取り壊されたくない人か、もしくは」
「もしくは？」
「これが一番厄介なんだけど……」
「うん」
「悪霊に体乗っ取られてたりしたら最悪よね、取り憑かれてるってやつね」
「……」
「だって俺もし翔ちゃんが取り憑かれたとしたら斬れないもん。何もできないからオレが殺られちゃう」
「でも女神様いるし……」
「だからよ。女神様は相手が翔ちゃんでも手加減しないってこと」

「俺が何ー？」
櫻井さんがドアの隙間からひょっこり顔を覗かせた。
出てこない。

「……こっち来ないの？」
「俺屋上嫌い」
「……」

大野さんが手にロープを持って周りを見渡してる。

私も一緒に周りを見渡してみたら、ちょうど割れたガラスの上辺りの手すりに、何かが擦れた跡がある。

「大野さんここ」
「ん？」
「ロープの跡？」
「うん。ぽいね。ってことはー、ガラスを割ったのは少なくとも霊障じゃない」

大野さんが難しい顔をした。
二宮さんがしゃがむ。

「……これ」
「ん？」
「……ペットボトルの蓋」
「……」
「公安が落とし物して帰るわけないからこれはここに無断で入った奴の忘れ物」
「なんでわかるの」
「ここ閉鎖された時期はペットボトルのお茶なんて売ってなかったでしょ」

二宮さんがあっつぅ、と言って額の汗を拭う。

「戻ろ」
「ん」

大野さんがロープを手に持ったまま戻ってきた。
「それどうするの？」
「とりあえず、ここ置いとこ」

そう言ってさっきのランタンがあった部屋の机の上に置いた。

「屋上に出入りできるのって外部者じゃないよね……」
私の言葉に大野さんと二宮さんが頷く。

櫻井さんが私の心を読んだのか、なるほどね、と、言った。

「裏手から敷地内に入れて2階の鍵が壊れていたのを見る限り、この病室は外部の人間の不法侵入の可能性があるのは否定できない」
「うん」
「けど屋上となれば話は別。病院の鍵はぜんぶ事務室にあった。誰でも出入り可能ではあるが、ただしここの職員に限る」
「うん、そうだね」
「つまり。公安を襲ったのは……」

……恐らく病院関係者。

「でもそれだけなら公安がもう解決してるよね」
二宮さんが呟いた。

「それだけならね」
櫻井さんもそう言った。