〇≠無の証明Ⅳ－１ (ページ15)

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一歩外に出たら、目の前に河東さんが立っていた。

「わ！」
「……何をしていらっしゃるのですか」

この人絶対なんかへん。
ジロジロ見てたら松本さんが私の腕を握った。

「ん？」

……今心の中の……。文章にする感じに、話しかけ、話してる？……聞こえてるかな？聞こえてなかったら反応ないのかな。

松本さんが私の目をじーっと見て心の中で話しかけてきた。

二宮さんまではいかないけど結構クリアに聞こえた。うんうん、と頷く。

「お茶がいるか聞こうとしてまして」
河東が言った。

……黒い影。……この人憑いてる、よくわかんないけど。……大野さんが近くにいるから？黒い影？よく見えない。憑いてる。男かな？

松本さんの感情が一気になだれ込んでくる感じで聞き取りづらいけど言いたいことはわかる。
うん、って頷いたら、ホッとしたみたいで饒舌になった。

……黒い影。ハッキリ見えない。見えない理由は、その影が外に続いてるみたいで本体がどこにあるかわかんない。どこかな？

……この二人見つめ合ってなんだ？

おお、河東事務長の思考が飛んできた。
確かに見つめ合ったまま動いてなかった！

「お茶は、結構です」

とりあえず河東さんに断る。
「そうですか……」

「あの」
松本さんが困ったような顔で河東さんに話しかける。

「なんですか？」
「いえ……ちょっと、いいですか？」
「なんでしょう？」
「少しお聞きしたいことがありまして」
「いいですよ、込み入った話ですか？」
「ええ、まあ」
「なら……二人のほうがいいですね、こちらへ」

……ああ、美形だな。かっこいい。櫻井、とか言った彼の方が好みだけどこっちもいいな。色白で筋肉質で。

「うわぁ！」
「へ？」

やば、やば。
声が出ちゃった。

「いえいえ何も！事務長さんはみんなと一緒のときにしよ？先、行こ？」
腕を絡めてやった。

「へ？どうした？」
「ではまた後で。失礼しまーす」
事務長に頭を下げて腕をぐいぐい引っ張って歩く。

「A？」
「せっかく京都に来たんだから美味しいもの食べたいね！夜、二人で抜けちゃわない？」
「へ？へ？」
「あ、そうだ！課長から電話が！」
「……課長？……え？」

松本さん目当ての相談が来たときに使ってる、
うちにはいないはずの「課長呼んできて」という暗号がこんな時に役立つとは！

「課長呼んできて……」
「ウッソまさか」

こくこく頷いたら、松本さんが目を見開いて頷いた。