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スマホで、見つけたから連れて帰る、ってラインを送ってるのが見えた。
「ここ思いつくの遅くなってごめん」
「……」
「俺が来るの待ってた？」
「……」
「返事しなさい」
潤くんが私の頭をぱふぱふ叩いた。
もう一回、あの時からやり直せないかな。
なんて思いながら、何十回も伝えた言葉をまた繰り返す。
「……潤くんが好き」
「うん、知ってる」
「……」
「知ってるよ……」
「……ごめんなさい、もう諦めるから」
「それももう何回も聞いてる」
やっぱり受け入れてもらえないんだ。
この後に及んでもなお。
私の目から涙が零れ落ちるのを潤くんが親指と人差し指でそっと、拭った。
「……」
「帰ろう」
「……キスしてくれたら帰る」
「馬鹿言ってないで……」
「本気だもん」
私の目を見て、潤くんが珍しく逡巡した。
初めて見た、付け入る隙。
「キスして、最初で最後でいいから」
最後？
潤くんの唇が小さく動いて、私の後頭部に手を伸ばした。
かがみこむ様に、そっと唇を近づける。
ギリギリのところで潤くんの動きが止まった。
「……やっぱ、ごめん」
心が張り裂けた音は、遠ざかる潤くんの足音と川のせせらぎに紛れて消える。
やっぱり駄目なんだ。
やっぱり、もう私なんていらないんだ。
立ち上がって、潤くんの背中とは反対方向に走って逃げる。
遊歩道を少し走って、真っ暗の草むらの方に足を向ける。
ぱしゃん。
ああ、支流に足を突っ込んだみたい。
一歩、水の中に足を突っ込んでしまったら、もうあとはどうでもよくなった。
パシャパシャ、水の中を歩く。
死にたいとか、考えてない。
ただ、もうこの世界から永遠に消えたいだけ。
川に流されてしまえば、
全部忘れられるかなぁ。
もう何も考えられなくなって、夢中で足をすすめていたら、ずる、と滑って尻餅をついて、腰まで水に浸かった。
ぶるりと寒気が来たけど、まだ寒さを感じる自分に絶望した。
なんにも感じなくなれば楽になれるのに。
「……う、……」
涙がポロポロこぼれたけど、拭う気力もなくて、また立ち上がる。
どこまで行ったら、なんにも感じなくなるんだろう。
また一歩足を踏み出したら、
「A！」と潤くんの声がした。
振り返ったら潤くんが、こっちに向かって走ってくるのが見えた。
「いや！来ないで！」
「何やってんだ！A！」
潤くんの叫び声。
見つかっちゃったら、ただの構って欲しい我儘女と同じじゃないか。
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りるまめ(プロフ) - 限りある時間を割いて読むのが私の至福のひとときです♪いつも素敵なお話ありがとうございます。 (2018年8月20日 0時) (
レス) id: ac8bd37eaf (このIDを非表示/違反報告)
橘花(プロフ) - スーちゃんどうしたのかなってぞわぞわしますね！きっと鳥籠にいるのを見て放してあげたんだろうけど、心境が切ない。。踊るっきゃねーな！ていいですね！とりあえずくるくる回ってみようかな！彼の守護女神様にぜひばちっと結界をお願いしたいです！！！ (2018年8月15日 23時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
キミ(プロフ) - いつもワクワクして拝読しております。そしてモゾモゾしちゃうほどに続きが絶妙に気になる終わらせ方で楽しませていただいております。お誕生日までの完結 楽しみにしてます！ (2018年8月15日 20時) (レス) id: 18136aec67 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - 大切で大切で他人に触れさせたくない、大事な女の子。自分ですら許せない…愛情を拗らせちゃった潤君がいとおしい。 (2018年8月11日 14時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - はじめまして！！実はかなり前からよしのさんのことを知っておりました。私はよしのさんの小説が大好きです。最初はよしのさんの小説で翔くんを好きになりました。今は潤くんに夢中です。よしのさんのお陰で私は今笑ってられています。ほんとにありがとうございます。 (2018年8月8日 0時) (レス) id: 9f20bed09a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2018年7月14日 10時
