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手、出してくれてよかったのに。
そう思う自分にちょっとびっくりした。
「あ！こんな時間！……じゃあ、私行きますね、お疲れ様でした！」
「ん、お疲れー」
ちょっと頭を下げて休憩室を出る。
私、潤くんのこと、好きそうに見えないんだ。
潤くんといるときの私は楽しそうに見えないのかな？
楽しいのに。
……楽しい？
ほんとに？
かごの中の鳥や、手折られて花瓶に入れられて愛でられる花は楽しいのかな？
大空を飛べる方が、雨に濡れて風の声を自由に聞ける方が楽しいのかもしれない。
ふと、思い出す。
潤くんが高校に入ってすぐのころ、飼ってたあの白い文鳥。
あの子の名前はなんだっけ？スーちゃん、みたいな名前だった。
ピンクのくちばしに白いキレイな羽。
潤くんの手の上で首を傾げてきゅるーい、って鳴いてとても懐いてた。
ある日、大切にしていたスーちゃんがいなくなった。
潤くんはスーちゃんがいなくなったあとも、すーちゃんの寝床のある鳥かごは捨てられなかったみたいで。
空を見上げていつも寂しそうにしてた。
あの鳥かごはどこにいったのかな。
バイトが終わるころ、チラチラと雪が降り始めた。
駐車場に潤くんの車。
「先上がっていいよ、お迎えでしょ？」
レジを閉めたあと、一人が夜間金庫に入金に行ってる間商品整理をしていたら、店長がそう言ってくれた。
「あ、ありがとうございます、お先失礼します」
いそいで着替えて外に出たら、潤くんがグレーのマフラーをぐるぐる巻きにして従業員出入口の前で待っててくれてた。
「お疲れ」
「潤くんありがとう！雪降ってきたね！」
「ん」
潤くんが微笑んで空を見上げる。
白い息。
潤くんの柔らかい髪と、長いまつ毛にふうわりと雪が積もった。
「潤くんきれい」
「何言ってんの。帰ろうか」
「まっすぐ帰るの？」
「お腹空いた？」
「うん」
「でもお母さんご飯作ってるでしょ、帰るよ」
「……うん」
潤くんが私を見下ろして、ふふ、と笑った。
「ちょっと遅くなっていいか電話してみ？大丈夫だったらご飯食べに行く？」
「うん！」
急いでスマホを取り出そうとしたら、先車に乗りなさい、って笑った。
ドアを開けてくれて、乗り込んですぐに電話をかける。
「あ、お母さん？今日、ちょっと遅くなっていい？」
「えっ！お父さん、ケーキ待ってるよ！」
「あ、そっかあ……」
「潤くん？」
「うん……」
お母さんが、ふふふ、と笑った。
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りるまめ(プロフ) - 限りある時間を割いて読むのが私の至福のひとときです♪いつも素敵なお話ありがとうございます。 (2018年8月20日 0時) (
レス) id: ac8bd37eaf (このIDを非表示/違反報告)
橘花(プロフ) - スーちゃんどうしたのかなってぞわぞわしますね！きっと鳥籠にいるのを見て放してあげたんだろうけど、心境が切ない。。踊るっきゃねーな！ていいですね！とりあえずくるくる回ってみようかな！彼の守護女神様にぜひばちっと結界をお願いしたいです！！！ (2018年8月15日 23時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
キミ(プロフ) - いつもワクワクして拝読しております。そしてモゾモゾしちゃうほどに続きが絶妙に気になる終わらせ方で楽しませていただいております。お誕生日までの完結 楽しみにしてます！ (2018年8月15日 20時) (レス) id: 18136aec67 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - 大切で大切で他人に触れさせたくない、大事な女の子。自分ですら許せない…愛情を拗らせちゃった潤君がいとおしい。 (2018年8月11日 14時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - はじめまして！！実はかなり前からよしのさんのことを知っておりました。私はよしのさんの小説が大好きです。最初はよしのさんの小説で翔くんを好きになりました。今は潤くんに夢中です。よしのさんのお陰で私は今笑ってられています。ほんとにありがとうございます。 (2018年8月8日 0時) (レス) id: 9f20bed09a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2018年7月14日 10時
