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「ただの情?これが?」
私の咎めるような声を聞いても潤くんは平然とした顔でコーヒーを啜った。

「雛鳥とかと一緒だよ、Aは最初に側にいた男に懐いて、それが恋愛感情だって勘違いしてるだけだよ」
「それ、断る口実にしてるだけでしょ?」
「違う」
「情なわけないじゃない」
「……じゃあどうして」

潤くんはそこで言葉を切った。

なに?
私は自分で気づかないうちに、潤くんに対する想いは恋愛感情ではない裏付けをとれるような言動をしていたのかな。

「何か、しちゃった?」
「……そうじゃないけど」
「……」
「今だって……」

いま?今、が何?
私、何か間違ってる?

「ごめんなさい」
「え?」
「ごめんなさい、何か間違った?」

潤くんの顔を覗き込んだら、潤くんは目だけを私の方に向けた。

「潤くん」

潤くんの腕に触れたら、潤くんは素早く私の手を解いた。

「……」
「……あ」
「……」
「触られるのも嫌なの……?」
「……」

潤くんは私の泣きそうな顔を見て、困ったような悲しい顔をした。

「泣くのは、ずるい」
「泣いてないもん」

そう言いながらも。
私は涙を武器にしてやろうってくらい自分は女だってことを自覚してる。
計算なのか、自然となのか、どちらともつかない涙がひとつぶ、つうっ、と落ちた。

咄嗟に拭う潤くんの指。
その手を掴んで頬擦りしたら、潤くんが私を勢い良く抱きしめた。

「あ、」

一瞬、ビクリと体が縮む。
いつもなら緩む潤くんの腕の力は緩まないまま、私の首筋に顔を埋めた。

「潤くん」
「ごめん……A」

潤くんの腕の力がギュウウ、とますます強くなって、は、と吐息が漏れた。

「潤くん、ちょっと、苦し……重……」
「身勝手なのは、わかってる、けど、……これだけ言わせて」

潤くんのかすれた声が耳元で聞こえて脱力した。
だめだ、限界。

ぐにゃり、と背中が反り返って、重力に逆らえず、仰け反る。
ソファの上にどさりと倒れたけど、いつもなら倒れそうになったら支えてくれるはずの潤くんは私を抱きしめたまま、覆い被さった。

ひ……、と吐息みたいな悲鳴が漏れそうになって、慌てて口を噤む。

この、体勢は。

ぞわり、と背中を這う緊張感と、これは何。
安心感と、恐怖と、それと快感?

好きな人に抱きしめられるってこんなに気持ちいいんだ。

はぁ、と吐息を漏らしたら。
潤くんの歯がカチカチ、と鳴った。

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りるまめ(プロフ) - 限りある時間を割いて読むのが私の至福のひとときです♪いつも素敵なお話ありがとうございます。 (2018年8月20日 0時) (レス) id: ac8bd37eaf (このIDを非表示/違反報告)
橘花(プロフ) - スーちゃんどうしたのかなってぞわぞわしますね!きっと鳥籠にいるのを見て放してあげたんだろうけど、心境が切ない。。踊るっきゃねーな!ていいですね!とりあえずくるくる回ってみようかな!彼の守護女神様にぜひばちっと結界をお願いしたいです!!! (2018年8月15日 23時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
キミ(プロフ) - いつもワクワクして拝読しております。そしてモゾモゾしちゃうほどに続きが絶妙に気になる終わらせ方で楽しませていただいております。お誕生日までの完結 楽しみにしてます! (2018年8月15日 20時) (レス) id: 18136aec67 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - 大切で大切で他人に触れさせたくない、大事な女の子。自分ですら許せない…愛情を拗らせちゃった潤君がいとおしい。 (2018年8月11日 14時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - はじめまして!!実はかなり前からよしのさんのことを知っておりました。私はよしのさんの小説が大好きです。最初はよしのさんの小説で翔くんを好きになりました。今は潤くんに夢中です。よしのさんのお陰で私は今笑ってられています。ほんとにありがとうございます。 (2018年8月8日 0時) (レス) id: 9f20bed09a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:よしの | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年7月14日 10時

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